【寒天問屋】


髪結い



「彼処のご寮さんは手先が器用ですやろ。わてが針に糸通すのにどれくらい時間かかるか、わかってますか」
「よう知ってます。せやから梅吉か松吉に頼むつもりやったんだす。それをあんさんが」

 善次郎は咳払いをした。

「あの二人は覚えることもやることも仰山あるんだす。此処ンとこ旦さんの絶壁を撫でとる暇も惜しいほどで」
「――絶壁やったら剃ってもらう必要あらへんのやけどな。さ、一思いにやってんか」






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