「っ、ふぅん、んっ」
「すずちゃん、声出しちゃダメ」

 お兄ちゃんが耳元で囁くだけで、ゾクゾクと体が震える。後ろから突かれながら、私はシーツを握り必死で唇を噛んでいた。
 初めてお兄ちゃんと体を重ねてから、私は毎日のようにお兄ちゃんの部屋に行った。お父さんとお母さんが寝てしまった深夜。私たちは二人で罪に溺れる。

「はぁ、すずちゃん、気持ちい」

 耳に、首筋に、熱い舌が這う。どうしてお兄ちゃんが私を抱くのか。分からない、でも私はもうお兄ちゃんから離れられない。

「お兄ちゃ、あっ、イく……っ」
「っ、俺も……」

 ドクン、と中で震えると同時に私は意識を飛ばしてしまった。
 目が覚めると、お兄ちゃんの香りと体温に包まれていた。ふと横を向くと、お兄ちゃんは綺麗な寝顔でぐっすり。私はそっとお兄ちゃんの腕から抜け出し服を着て自分の部屋に戻った。自分の部屋は寒く、ベッドの中も冷たくて、体を抱き締めるようにしながら目を瞑る。でも、仕方ないんだ。私は妹だし、きっとお兄ちゃんの気まぐれで相手をしてもらっているだけ。お兄ちゃんには彼女がいるんだから、そのうち私には見向きもしてくれなくなる。だから、今だけ。今だけ、お兄ちゃんに触れられる喜びを噛み締めたい。それすらもできない私の立場だけれど。
 次の日、私は最近遊んでいた彼と会っていた。もう会わないと言うために。家まで迎えに行くと言われ、誰もいない予定だったから分かったと言った。迎えに来た彼は家に入りたいと言った。でももう会わないと言うだけだし、もう体の関係を持つつもりはなかったから断ったのに。

「っ、やだ、やめて……っ」

 気持ち悪い。お兄ちゃんじゃないとやだ。彼の手が私の服の中を弄る。私は必死で抵抗したけれど、彼は止まらなかった。玄関で床に押さえつけられ泣く私をギラギラとした目で見下ろす彼が怖くて。

「や、だ、たすけて、お兄ちゃ、」

 頭の中に浮かんだ、いや、頭の中からずっと消えない人を呼んでいた。

「……何事かと思えば」

 次の瞬間、私の上にいた彼が吹っ飛んだ。ひっ、と短い悲鳴を上げると、お兄ちゃんの長い脚が床に転がった彼の頭を踏み付けた。

「……俺の妹に何してんの?」

 そう言ったお兄ちゃんは怖いくらい綺麗な笑顔で彼を見下ろしていた。

「ねぇ、俺のすずちゃんに何してんの?」

 何も答えない彼の頭をお兄ちゃんは容赦なく何度も踏みつけて、私は怖くなってお兄ちゃんの腕に抱き付いた。

「お兄ちゃん、私大丈夫だから、もうやめて……っ」

 このままだと大変なことになりそうだったからお兄ちゃんを止めた。お兄ちゃんは一瞬無表情で私を見下して、けれどすぐに微笑んだ。

「どうして?すずちゃんに酷いことしたのにどうして許すの?」

 いつもの微笑みと一緒なのに全く感情がこもっていないのが分かって怖いと思った。でも、それはお兄ちゃんがという意味ではない。お兄ちゃんに嫌われるのが、ということ。私の思考は結局お兄ちゃんで回っている。

「っ、私は、お兄ちゃんがいれば他のことなんてどうでもいいの」

 いつかお兄ちゃんはきっと、私に飽きて簡単に捨てるだろう。でも、それでもいいの。だって私はお兄ちゃんのことが好き。どんなに頑張っても、お兄ちゃん以外好きになれないから。お兄ちゃんはようやく笑みを崩して、優しく私の頭を撫でた。傷ついても、お兄ちゃんが私に触れなくなっても。お兄ちゃんがいたら何もかも平気。
 逃げるように家を出て行った彼を呆然と見送っていると、お兄ちゃんがぐっと私の手を引いた。洗面所に行き、手早く服を脱がされていく。そして浴室に入ると、シャワーを頭からかけられた。

「っ、」

 冷たい水が体温を奪って行く。でもお兄ちゃんがぎゅっと抱きしめてくれて。お兄ちゃんの服、濡れるのにいいのかな。でもあったかい……

「すずちゃん」
「……っ」
「……。洗ってあげる。座って?」

 さっきの冷たいお兄ちゃんはどこにもいない。今私の前にいるのは妹思いの優しいお兄ちゃん。でも、私の体を滑る手は「優しいお兄ちゃん」のそれじゃない。

「っ、あ……!」

 ボディーソープを泡立てて、お兄ちゃんは素手で私の体に滑らせていく。お兄ちゃんに触れられるだけで敏感に反応してしまう私の体は強制的に熱くなっていって。お兄ちゃんは甘い瞳で私を見上げていた。

「可愛い、すずちゃん」

 泡でぬるぬると滑る指が、それでも的確に乳首を弾く。甘い声を抑えようと手で口を覆ったのに、その手をしっかりと握られてしまった。シャワーに濡れるお兄ちゃんはとても色っぽくて綺麗だ。お兄ちゃんは私の体の隅々までしっかりと洗い、シャワーで温かいお湯を掛けてくれた。火照った体が更に温められて。お兄ちゃんが服を脱ぎ捨てた時、期待でふるりと体が揺れた。

「すずちゃん、明るいところで俺のちゃんと見るの初めてだよね?」

 お兄ちゃんは座っている私の前に立つ。お兄ちゃんのそれは固く天井を向いていて、あまりの卑猥さにごくりと喉を鳴らした。

「もう挿れようか?」

 私はその言葉に首を振り、そっと手を伸ばした。体が熱くてたまらない。自分の気持ちいいところを指で触りながら、私はひたすらお兄ちゃんのそれを愛撫した。奥まで咥えると苦しくて、でも気持ちいい。お兄ちゃんの少し余裕のない顔を見るだけで子宮がきゅんと疼く。早く、これを挿れてほしい。奥まで挿れて、私の全てをお兄ちゃんのものにしてほしい。

「すずちゃん、君は俺のものだよ」

 頭を撫でながらそう言ったお兄ちゃんに、私は立ち上がり抱きついた。片足を担がれ、中心にお兄ちゃんのそれを擦られる。ヒクヒクと疼くそこはお兄ちゃんのそれを今すぐにでも呑み込もうと誘う。お兄ちゃんはとても色っぽい甘い微笑みを私に向け、囁いた。

「すずちゃんのここ、早く挿れてほしいって言ってるね」
「っ、う……」
「これ好きなの?さっきもすごく美味しそうに舐めてたけど」
「お、兄ちゃ、」
「名前で呼んで」

 ぎゅうっと抱き締められ体が浮く。その瞬間それが中に押し込まれて、自分の体重で一番奥まで突き刺さった。目を見開きハクハクと口を開け閉めする私の顔中にお兄ちゃんはキスを落とす。体を壁に押し付けられ、強く腰を打ち付けられた。

「ごめん、すずちゃんが他の男に触られてるの見ただけで気が狂いそう」
「あっ、んん、あ、はぁ、」
「すずちゃんは俺だけ見てて。そうじゃないと誰の目にも届かないところに閉じ込めちゃうから」

 お兄ちゃんの甘い声が耳を伝って脳に直接流れ込んでくる。洗脳されるみたいに私は必死で頷き、思った。私はお兄ちゃんのもの。他の人には触らせない。私に触れるのはお兄ちゃんだけ。

「すずちゃん、名前」
「んっ、か、ける」
「……うん」
「翔……っ」
「……ああ、もうイッちゃったね」

 名前を呼びながらビクンビクンと体を跳ねさせた私にお兄ちゃんは甘く微笑みかける。そしてガクガクと震える脚を床につかせ、後ろを向かせた。収縮するそこはお兄ちゃんのそれを離すまいと締め付ける。一瞬抜かれたそれは、また後ろから入り込んできた。

「あっ、はっ、大っきい、」
「すずちゃんが可愛いから」

 しっかりと腰を掴まれガツガツ奥を抉られる。立っているだけで必死だった。ガクンと膝が折れ浴室の床にへたり込む。お兄ちゃんは覆い被さるように私の体を抱き締め、獣みたいな体勢で腰を打ち付けた。

「か、ける、だめ……っ」
「ん?」
「おかしくなっちゃ、」
「……いいよ。そのまま俺だけ求めて、俺を見るだけで体が熱くなっちゃう、そんな体になっても」
「あっ、んぅ、あ」
「……すず、イくから全部受け止めてね?」

 ガクガクと体が震える。耳元のお兄ちゃんの息が一瞬詰まった瞬間。ドロリと中に熱いものが広がった。荒い息が混じり合う。噛み付くように重ねられた唇に必死で応えながら。中でお兄ちゃんのそれがまた固くなるのを感じていた。

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