おはよう

 すずちゃんの眠りは深い。俺は浅いほうだから、夜中に何度も起きては隣にすずちゃんがいることを確認する。すずちゃんは安心しきった顔で俺の服を握って眠っていて、寝ている時まで可愛いなんて反則だと思いながらまた目を瞑る。朝になったらすずちゃんは隣にいないことが多い。朝ご飯を作ってくれていたり、一限があったり理由は色々だけれど、やっぱり隣にいないと寂しい。
 目を開けると、すぐ近くにすずちゃんの寝顔があった。時計を確認したらすずちゃんがいつも起きる時間を過ぎていて。そういえば昨夜無理をさせたかなと心配になりそっと頬に触れる。すずちゃんの体温は甘く優しく俺の指を伝って全身に染み渡って、幸せだと思いながら少し開いた唇に唇をくっつけた。

「んっ、かけるさ、」

 小さな手が俺の指を握る。ちゃんとそばにいるよ。微笑みながら額にキスをすると、トロンとしているものの一応開いた目に俺が映ったのが見えた。

「……おはよ」

 おはよーございます、と少し掠れた声で言いながら俺の腕に潜り込んでくるすずちゃんはまだ眠いようで。すずちゃんの体を包み込むように抱き締め、目を閉じた。俺ももう少し眠ろうかな。次に目が覚めた時も、すずちゃんは横にいるだろうか。いてくれたらいいな。それだけで俺は幸せな気分で新しい一日を迎えられるから。

「かけるさん」
「んー?」
「私、かけるさんの隣にずっといるからね」

 寝ぼけ眼のままそんなことを言うすずちゃんに笑ってしまった。俺の気持ちが全て見透かされているようで少し恥ずかしい。でも。

「うん、ありがとう」

 初めてできた大切な人。俺はちゃんと大切に出来ているのかな。ああ、やっぱり難しいことを考えるのは後にしよう。今はすずちゃんの体温を感じながら眠りたい。

「おやすみなさい」

 すずちゃんの声を聞きながら、俺は深く意識を飛ばしたのだった。

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