甘いカラダ

「うわあ、翔さん、見て見て!」
「うん、綺麗だね」

 普段あまりゆっくりできないからと、翔さんがお店を臨時でお休みして温泉旅行に連れてきてくれた。部屋に露天風呂がついていて、窓からは海が見える。感動してはしゃいでいると、翔さんが後ろからぎゅっと抱き締めてきた。お部屋に案内してくれた仲居さんがまだいるから、恥ずかしくて身を捩る。翔さんはそんな私の気持ちもきっと簡単に見抜いている、それでも離さず極上の微笑みを浮かべた。

「まずお風呂入ろっか?」

 更に真っ赤になった私を見て翔さんはクスクスと笑った。

***

「気持ちいいね」
「はい」

 ……あれ?翔さんのことだから、お風呂に入ったらすぐに触ってくると思っていた。なのに翔さんは優雅に腰掛けただ温泉を満喫している。期待していたわけではないけれど、何となく拍子抜けだ。

「すずちゃん」

 来た!翔さんが私の手を引く。そしてちゅっと頬に軽くキスをくれた。火照った体が更に熱くなって私は翔さんに身を委ねる。翔さんは私の体を包み込むように抱き締めて、肩に口付けした。

「気持ちいいね。幸せ」
「私も……」

 あれあれあれ?翔さんは私を抱き締めたまま動かない。今日はそんな気分じゃないのかな?でも……

「……すずちゃん」
「っ、は、はい」
「洗ってあげる。おいで?」

 翔さんは私の手を引き湯船から出る。そして椅子に座らせて前にしゃがみ込んだ。
 体を見られるのはすごく恥ずかしい。それに、翔さんの綺麗な手が私の肌を滑っていく。翔さんに触れられるだけで火照っていく体は敏感になって、ただ洗ってもらっているだけなのに息が上がった。
 翔さんを見ると、翔さんからは下心だとかそんなものは感じられず、ただ純粋に体を洗ってくれているだけのようで。はぁ、と思わず熱い息を零せば「のぼせちゃった?」と聞かれた。フルフルと首を横に振る。
 背中に回った翔さんの腕がお尻を撫でて、びくんと体が震える。足開いて、と耳元で囁かれたら羞恥心なんて消えた。翔さんの長い指がそこをなぞる。洗ってもらっているだけなのに、ゾクゾクと快感が背中を駆け上って。パッと翔さんが離れた時、物足りなさから思わず翔さんの腕に縋り付いた。

「どうしたの?」
「っ、いじ、わる」

 目に滲んだ涙を見て、翔さんは優しく微笑んだ。ほんとうに、ひどいひと。

「泡、流してからね?」

 翔さんの手で泡が流れ落ちていく。何だか纏っていたものを全て取り払われたような気がして羞恥心が蘇った。

「翔、さ、」
「すずちゃんも俺の体洗ってくれる?」

 甘い提案にゴクリと息を呑んだ。
 手の中でいっぱいに泡立てて、翔さんの滑らかな肌に手を滑らせていく。間近にある翔さんの唇にキスしたくてたまらなくて息が荒くなる。私、変態みたい。でも止まらない。丁寧に体を洗って、とうとう翔さんのそれに辿り着く。そこは硬く天井を向いていて、私だけ興奮していたんじゃないんだと安心した。泡だらけの手でそれを扱くと、翔さんの口から甘い吐息が溢れる。それを全部呑み込むようにキスをした。深く、ねっとりと舌を絡み合わせて、吐息を奪う。脳が痺れて正常な思考ではないのは分かっていた。
 翔さんがキスをしながら自分の体にお湯を掛ける。お互いに何もかも取り去って、私たちは裸で抱き合った。

「興奮してるすずちゃん、可愛い」
「わざと、焦らしたんですか……?」
「俺がすずちゃんに触れて興奮しないわけないでしょ?」

 いたずらに微笑んだ翔さんにも愛しさが募って、私は扱いていたそれの前に跪いた。目の前でびくびくと跳ねるそれに舌を伸ばす。翔さんは私の頭を撫でてくれた。
 先っぽをくるくると舌で包み込んで、舐め上げる。ねっとりと舌を這わすのが翔さんは好きだから、私は翔さんに教え込まれたようにそれを愛撫した。更に硬く熱くなった頃、翔さんは私の腕を引いて立たせた。

「風邪引いちゃうから布団行こう」
「んっ、かける、さん」
「すずちゃんの体冷たいよ?」
「や、だ……っ」
「だーめ」

 甘やかすようにキスをして、翔さんは私を抱き上げた。丁寧に体をタオルで拭いてくれる間も火照った体は止まらなくて、でも翔さんが自分の体を拭いている間大人しく待っていた。

「いい子で待てたからご褒美」

 翔さんが私の脚を大きく開く。無駄なところなんて一つもない完璧な見た目の翔さんが、加虐的になんて一つも見えない甘い微笑みで舌舐めずりをする。ゾクゾクと這い上がる身震いするほどの期待で頭がおかしくなりそう。擦られただけで「あっ、あ……」と濡れた声が溢れて。

「すずちゃんは本当に可愛いね」
「そんなに俺が欲しい?」

 翔さんの言葉に私は言葉ではなく体で反応した。

「……いいよ、全部あげる」

 グッと肉を割って入ってくる。ハクハクと口を開いたり閉じたり。私の体は貪欲に快感を貪った。
 ゆっくりと、ギリギリまで抜いて一番奥まで入ってくる。確かめるような、刻み付けるような動き。私の中は翔さんを離すまいと絡み付いた。

「っ、はぁ……、気持ちい」

 翔さんは髪を掻き上げて吐息と共に呟く。私はいつまで経っても翔さんにドキドキして、抱かれていると実感する度に泣きそうなほど嬉しくなって。翔さんの腰に脚を巻き付ける。翔さんは甘く微笑んだ。

「そんなに怖がらなくてもどこにも行かないよ?……必死なすずちゃんも可愛いけどね」

 翔さんを信じてないわけじゃない。でも翔さんの重くて絡み付くような愛情に溺れるようにハマっていく度、怖くなる。もし翔さんが私に飽きてしまった時、残された私は生きていけるのかって。重いのは私のほうだ。

「すずちゃん、可愛い。本当に可愛い、すずちゃん。俺にはすずちゃんだけだよ」

 逃げるように俯いたら、翔さんは私を後ろからぎゅっと抱き締めた。腰をしっかりと掴まれて、何も考えられないくらい激しく突かれる。頭が真っ白になった時、翔さんが囁いた。

「何も考えないでもっと俺にハマって」

 と。

***

「翔さん、すっごく楽しかったですね!また来たいな」
「うん、すずちゃんが来たい時にいつでも」

 ちゅ、と頬にキスをして翔さんが私の手を取る。指を絡めるように繋いだ翔さんの薬指には指輪がついていた。

「次来る時は夫婦だね」
「えっ?!」
「いや?」

 不機嫌そうに頬を膨らませた翔さんに私は慌てて首を横に振る。翔さんはよかった、と微笑んだ。結婚、もうすぐなのかな?じゃあ、少し安心かな……。

「……すずちゃんが何て言っても離さないけどね」
「え?」
「ううん、何も」

 重いのは、どっち?

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