甘いヤキモチ

 綺麗な人が翔さんの頬に触れているのを見て頭の中が真っ白になった。翔さんは浮気なんてしない。そう分かっていても。その光景を見ているだけで嫌で、私はその場からそっと離れた。
 翔さんが言い寄られているなんて決して珍しいことじゃない。あんなに綺麗な人なんだから、フェロモンだって垂れ流しなんだから、女の人なら誰だって惹かれるに決まってる。
 慣れないと。もうそろそろ、翔さんが他の人にモテることに……

「……やだ……」

 私はその場で踵を返し走り出した。細い路地を抜けて、Cafe fleurに入る。庭のところにいた二人は、まだそこにいた。違ったのは、翔さんがその人の手を払っていたところ。

「すずちゃん」

 翔さんが私に気付いて表情を綻ばせる。女の人は私を振り返って悔しそうに顔を歪めた。

「かっ、翔さんは」
「うん?」
「わ、わ、私の、恋人、なので」
「……うん」
「ベタベタ、触らないでください!」

 い、言った……。初めてだ。こんなに独占欲を露わにするのも、誰かに攻撃的な態度を取るのも。でも、私は……

「すずちゃん」
「わっ」

 その場で抱き締められ顔中にキスが降ってくる。慌てて胸を押したら、その手を握られほぼ無理やり翔さんの方を向かされた。

「どうしよう、めちゃくちゃに犯したい」
「うっ、え、」
「すずちゃんがもう許してって言うまでイカせてすずちゃんのお腹がパンパンになるまで中出ししたい」
「か、翔さん、人前です……」
「うん、ごめん、でももう勃ってるから無理」

 太ももにグイグイと押し付けられるそれは確かに硬くて熱くて、目の前の彼女がハッと手で口を押さえたのを見て恥ずかしくて泣きそうになった。翔さんは人がいることなんて忘れたみたいに私をぎゅうっと抱き締めて頭にも顔にもキスを落としてきて。するりと服の中に手が入ってきた時はさすがに止めた。

「か、かけるさ、」
「今日もいっぱい中に出してあげる」

 にっこりと、誰もが見惚れるような微笑みでとんでもないことを言った翔さんは、彼女が駆け出したのを見てようやく人がいたことを思い出したようで「あっ」と言った。けれど全く気にせず、それどころか邪魔者がいなくなったとばかりに私の手を引き歩き出す。閉店後のお店は静かで暗くて、鍵を閉める音が聞こえたと同時にまるで獣みたいに翔さんが飛びついて来た。

「すずちゃんはほんと、俺の理性を崩す天才だね。まぁ、俺の理性なんてあってないようなものだけど。だって俺、いつでもどこでもすずちゃんのこと抱きたいと思ってるんだよ」

 あっという間に服を脱がされて、身体中にキスが降ってくる。翔さんの熱く綺麗な手が身体を這って、私の身体は簡単に昂っていく。

「すずちゃんはすぐに濡れるね」

 確認するように指で中心に触れた後、翔さんは大きくなったそれをそこに擦り付けた。もう挿れるのかな、と息を詰めたけれどそうじゃなかった。

「擦るだけで気持ちいーね」

 後ろから抱き締め、胸を揉みながら、翔さんは擦り付けてくる。私の体から出るいやらしい液体で滑りが良くなって、くちゅくちゅといやらしい音が鳴る。熱いのが擦れて、勝手に声が出て。乳首をきゅうっと掴まれた瞬間、私はびくんと身体を震わせてイッた。

「すずちゃん、おいで」

 腕を引かれて歩くも、膝がガクガクと震えてフラフラする。翔さんはそんな私の腰を抱いて椅子に座らせた。

「挟んで?」

 トロトロに甘い笑顔で言われたら逆らえない。胸の間に擦り付けられたそれを胸で挟んだ。ゆるゆると腰を振りながら、翔さんは熱い息を吐く。優しく頭を撫でる手も熱くて脳が中心から蕩けていくみたいだった。
 いつも翔さんに気持ち良くしてもらってばかりだからたまには私がしてあげたい。そう思ったから、舌を出して胸の間にあるそれの先っぽをぺろりと舐めてみた。

「ん、気持ちい。すずちゃんは本当に可愛いね」

 翔さんに甘い瞳で見てもらえるのが、褒めてもらえるのが嬉しくて。私はそれを咥え込んだ。ふるりと翔さんの腰が揺れる。真っ暗なお店の中、唯一見える翔さん。この淫靡な世界に、私たちは二人だけだ。

「んっ、翔さん、もう、欲しい……」
「うん、おいで」

 両手を広げた翔さんの胸に飛び込む。翔さんは見せつけるみたいに服をゆっくり脱いでいった。

「すずちゃん、ここ座って」

 私が座っていた椅子に座った翔さんは、私を抱き締めたまま。勃ち上がったそれに跨って、そのまま呑み込んでいった。

「んんっ、はぁ、あっ」
「すずちゃん、こっち向いて」

 熱い吐息を呑み込むように唇に噛み付かれる。こんな風に、獣みたいにお互いを貪って。頭がおかしくなるみたいな快感に溺れていく。こんなにセックスに夢中なのは私だけじゃなくて、翔さんもだったらいいのに。

「すずちゃん、激しいよ」

 どこか嬉しそうに笑った翔さんは繋がったまま私を抱き上げて、テーブルに寝かせた。脚を抱えられて一番奥まで深く刺さる。力が入った身体はすぐに昂ぶっていく。

「あっ、か、けるさ、すき……」
「うん……」
「だいすき……!」
「っ、俺も、愛してる」

 身体を倒した翔さんをしっかりと抱き締めて、私は達する。それと同時に中で欲望が弾けたのを感じた。

***

「すずちゃん、もう一回言って?私の恋人なのでって」
「っ、やです、恥ずかしい……っ」
「オイお前ら、人前でイチャイチャすんな」

 次の日の閉店後、何度もおねだりしてくる翔さんに辟易していたら、悠介さんが呆れたように言った。でももちろん翔さんは全く気にせず私を抱き締めてくる。

「ね?一回だけでいいから」
「うっ……、か、翔さんは、私の……」
「ごめん、もう我慢できない!悠介あとよろしく!」
「ひっ」
「てめぇふざけんじゃねぇ股にぶら下がってるそれ引き抜くぞ!!」

 お店の後片付けを放置して私を抱きかかえた翔さんに、悠介さんの怒鳴り声がかかる。でも翔さんが止まるはずもなく、私はそのままお店の倉庫で美味しくいただかれたのだった。

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