甘い毒
「すずちゃん、起きて」俺の言葉にすずちゃんは目を開けてトロンとしたまま俺を見上げた。状況が分からないのか、ふわふわと周りを見渡して。俺はすずちゃんの中に挿れたままの自身で一番奥を突いた。
「ひぅっ、」
すずちゃんは目を見開いて背を仰け反らせる。一瞬で火照っていく柔らかい体を抱き締めた。
「すずちゃん途中で気失ったんだよ。まだ寝ちゃダメ。今日は俺のしたいこと全部するって約束でしょ?」
「うっ、かけ、るさ……、」
俺にしがみついてハクハクと口を動かすすずちゃんは本当に可愛い。その唇を塞いで、呼吸を全部み込む。苦しいと俺の胸を叩きながら、それでも必死で舌を絡めてくるすずちゃんに俺はまた夢中になって。俺はすずちゃんの中からそれを抜いた。そしてすずちゃんの胸に跨る。
「舐めて?」
すずちゃんの中に吐き出した白濁と、すずちゃんの気持ちよくなった証。それがぐちゃぐちゃに絡みついた俺の自身を見て、すずちゃんはゴクリと息を呑んだ。そして躊躇いがちに舌を伸ばす。
……ああ、本当に従順なんだから。そんなだから他の男に酷いことされるんだよ?
昨日、すずちゃんが同じ研究室の院生に襲われたらしい。香穂ちゃんが助けてくれたおかげで未遂だったらしいけど。問題は、その院生にすずちゃんが憧れていて満更でもなかったということ。浮気とまではいかない、小さな心の隙。
「すずちゃん、俺は君が好きだよ」
「んっ、んん」
「でも君に他に好きな人ができたなら君を手放してもいい」
「んんん」
「君には本当に幸せになってほしいんだ」
こんな言い方をして、本当にズルいと思う。現にすずちゃんは泣きそうな顔で俺を見上げていて、必死で俺を気持ちよくさせようと舌を動かしている。
手放していいという気持ちは本当。ただ、手放さないためにどんな手を使ってもいいとも思っている。君の気持ちがもう二度と他に向かないように、もっともっと君を夢中にさせる。
「……すずちゃん」
「っ、んんっ」
「愛してる」
口から引き抜くと、すずちゃんは一気に流れ込んできた酸素に噎せた。頬を撫で、見上げたすずちゃんに微笑む。自分の容姿は嫌い。でも、使えるものは何でも使う。
……甘く、優しく、ドロドロに甘やかすみたいに。俺は君を、俺から離れられないように縛り付けていく。本当は優しくなんてない。息苦しくて、中毒になる。麻薬みたいに。俺がいないと生きていけないようにしてあげる。
「……ほらすずちゃん、足開いて」
「うっ、かけ、るさ、」
「気持ちよくしてあげるから、ちゃんと俺を見てて?」
ゆっくりゆっくり、侵していく。すずちゃんが気付いた時にはきっともう戻れない。……ああ、もう遅いかもね。
「ほんと、トロトロな顔。そんなに気持ちいい?」
「っ、きも、ちい……っ、もっと、もっと……、翔さん……!」
あんなに可愛らしいすずちゃんがこんなに乱れるのは俺の腕の中だけ。だから、
「……離さないからね」
すずちゃんは少しだけ泣きそうな顔をして、俺にしがみついた。