君の愛で息をする

 目の前の白い肌にかぷりと噛み付く。何度も甘噛みするとすずちゃんはふふ、と笑った。

「くすぐったい?」
「うん」

 激しくするのもいいけど、こうやってゆっくり互いの体温を分け合うみたいに肌を重ねるのもいい。後ろからしっかりすずちゃんの体を抱き締めて耳や首筋、肩にキスをする。すずちゃんは俺の頭を抱き締め髪をくしゃっと握った。

「気持ちいいね」
「っ、ん、」

 はぁ、と同時に熱い息を吐けば吐息まで一つになれたみたいで嬉しい。すずちゃんの中が俺の形に変わってパズルみたいにぴったり合わさって。俺たちは同時に深い絶頂に身を沈めた。


 キッチンから水を持ってきてベッドでくったりとしているすずちゃんに手渡すと、すずちゃんはありがと、とふわりと笑った。この笑顔に弱くて、またキスしたいと深みに嵌っていくのをすずちゃんは知らないんだろうな。唇をくっつけて、髪を撫でる。触れるだけのキスでも満たされるのだから不思議だ。

「そういえばね、マンションの向かいにケーキ屋さん出来たでしょ?」
「うん」
「この前行ったらすごく美味しかったよ」
「そう。じゃあ二人で行こっか?」

 すずちゃんは嬉しそうに笑って俺に抱きついてきた。
 服を着て、すずちゃんが簡単に化粧して、それから二人で家を出た。俺の腕を「早く早く」と引っ張るすずちゃんは相当そこのケーキを気に入ったようだ。

「いらっしゃいませ」

 可愛らしい雰囲気のお店で奥にはイートインのスペースもあった。すずちゃんは目を輝かせてケーキを選んでいる。カウンターに立っていたお姉さんが見つめてくるから職業病で微笑めば、真っ赤な顔で目を逸らされた。……やってしまった気がする。はぁ、と小さくため息を吐いた時、奥から俺と同世代の男性が出てきた。

「また来てくれたんですね。ありがとうございます」
「すごく美味しかったので!今日のオススメはどれですか?」

 他にもお客さんは何人かいるのにすずちゃんに話しかけてきた男性は店主らしく、嬉しそうにすずちゃんにケーキの説明をしている。お姉さんの熱い視線を受けながらすずちゃんの横に並んだ。

「翔さん、このフルーツタルトがオススメらしいです」
「美味しそうだね。家で食べる?」
「ここドリンクもあるんですよ!だからここで……」
「そうしようか」

 すずちゃんはまた嬉しそうに微笑む。チラリと店長を見ると、彼は困惑したように俺とすずちゃんを交互に見ていた。……ほんと、人のこと言えないけど罪だよねすずちゃんも。

「んー、美味しい!翔さん、一口貰っていい?」
「いいよ。口開けて」
「えっ」
「ん」

 俺のガトーショコラを一口分掬ってすずちゃんの口元に出せば、すずちゃんは真っ赤な顔をして小さく口を開けた。これくらいで照れるなんてほんと可愛いな。そう思いながら俺も口を開ける。すずちゃんはおずおずとケーキを取り差し出してくる。その手を握ってわざと色気を振り撒きながら見せ付けるようにそれを食べる。

「っ、翔さんの馬鹿……っ」
「ん?何が?」

 頬を膨らませるすずちゃんに、俺は満足してふっと笑った。
 その後、ケーキを堪能したすずちゃんは満足げに「また来ましょうね」と言って店長に会釈する。チラッと振り向けば俺たちをじっと見ていたからわざとすずちゃんの手を目の前で握ってやった。


「すずちゃん、あの店何回一人で行った?」
「えっと、三回……?」
「そう」

 家に入った瞬間すずちゃんの肩を抱いてキスをする。甘ったるいクリームとココアの味がして、俺の中に小さな不快感が広がった。

「……すずちゃん、ちょっと酷い男になるけど許して」
「えっ」

 すずちゃんを抱き上げて、俺はベランダに向かった。

「舐めて?」

 すずちゃんの耳元で囁きながら小さな手を股間にやると、すずちゃんは息を呑んで首を横に振った。外でするのはやっぱり抵抗があるかな。でも、誰にも見せないよ。すずちゃんの可愛い顔も、エッチな顔も。ベランダの手すりに肘を掛け振り向いて下を見れば、さっきのケーキ屋が見えた。ちょうど外に出てきた店長と目が合う。口角を上げてしまった俺はきっと相当性格が悪い。だって今、すずちゃんは結局俺の自身を愛撫しているのだから。

「すずちゃん、気持ちい、」
「っ、んっ、ふ、」

 嫌だなんて言いながら、すずちゃんは夢中で俺のを咥え火照った顔で俺を見上げる。こんなことしたら嫌われるかな、そう思うこともある。でも結局すずちゃんは受け入れてくれるから、俺は安心するんだ。どこまでも、一緒に堕ちていける気がする。

「すずちゃん、ここで挿れる?ベッドがいい?」

 その言葉だけでふるりと震えるすずちゃんの体。俺はもう一度振り返った。店長は相変わらずこっちを見上げていて、小さくため息を吐いた。

「おいで」

 すずちゃんの頭を撫で手を伸ばすと、すずちゃんは蕩けた顔で俺の手を握り抱きついてくる。ぎゅっと抱き締めてキスをした。体の向きを変え、すずちゃんの顔は見せないように。深く唇を重ね、彼を見下ろす。……ダメだよ、すずちゃんは俺のだからね。他の男は誰も、すずちゃんに指一本触れさせない。すずちゃんの肩に甘く噛み付く。すずちゃんが甘い息を吐いて「大好き」と言った。

「……すずちゃん、愛してる」
「っ、ん、」
「息が出来ないほど愛してあげるね」

 すずちゃんを抱き上げて部屋に入った。窓は開けっ放しだったから、もしかしたらすずちゃんの声は聞こえていたかもしれない。翔さん大好き、翔さんもっと、なんて。もっと聞かせてやりたいと思いながら、俺はすずちゃんを抱き尽くした。

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