甘い欲求

 最近、翔さんとすれ違いの生活が続いている。私が忙しいせいで、あまり翔さんと話せていない。夜は疲れてすぐに寝ちゃうし、朝は早いし。最後にキスしたのはいつかなって思うほど。夜中に目が覚めた時、翔さんが私を抱き締めて眠ってくれているのは嬉しいけれど……。やっぱりちゃんと、触れ合いたいな……。
 翔さんがまだ帰ってきていない静かな部屋。やらなければならないことはまだ山積みなのに。気分転換に何か飲もうと立ち上がった時、椅子に翔さんのシャツが掛けてあるのが目に入った。これ、洗濯するやつかな。そう思い手に取ると、ふわりと翔さんの香りが漂う。思わず鼻を近付けてくんくんと嗅いでしまった。……翔さんの匂いだ。胸が疼く。私は好奇心でそのシャツを羽織ってみることにした。
 身長差があるせいで、翔さんのシャツは私の膝まで行く。胸が疼くと同時、翔さんに包まれているような気になって。じゅん、と下半身が熱くなった。
 最近、翔さんに抱かれたのはいつだったっけ。私ってこんなにえっちな子だったかな。どうしよう。翔さんに触れたい。素肌に翔さんを感じたくて、着ていたキャミソールとショートパンツを脱ぎ去った。仕立てのいい生地が直接素肌に触れる。翔さんに触れているような気分になると、更に体は熱くなった。
 ソファーに座り、脚を開いて上げる。恐る恐る中心に触れてみると、そこは既に下着の上からでも分かるほど濡れていて。ピクンと体が跳ねた。
 ブラを下げて、乳首にも指で触れてみる。そこはすぐに赤くなって、勃ち上がった。翔さんの服を着て、自分で触って。恥ずかしいのに止まらない。
 そういえば、この前翔さんが私に見せてくれたものがある。私は立ち上がって寝室に入った。寝室のライトが置いてあるチェストの二段目の棚。『今度使おうね』と翔さんがいい笑顔で言っていたもの。箱を開けると、ピンク色の卵型のおもちゃと、紫色の男性器の形をしたおもちゃ。ちゃんと拭けば、バレないよね。私はそっとピンク色のものを取り出した。
 ベッドに横たわり、下着を取り去る。翔さんの服だけを着て、私はピンク色のものを動かしてみた。……これを……、当てるの、かな……。
 まず、乳首に当ててみる。ブーンという機械音のするそれをそっと当ててみると。

「んんっ」

 絶妙な振動が気持ちいい。もう止まれなかった。下半身を指で弄る。トロトロに濡れたそこに指を這わす。いつも翔さんがやってくれるみたいに。突起を弾き、指を挿れて。でも自分の指じゃ気持ちいいところに届かなくて。もどかしい快感が体を伝っていく。
 ……やっぱり、本物の翔さんに触れたい。でも、こんなに恥ずかしいことしてるの、見られたくない。うう、翔さん……。
 泣きそうになって体を起こした時。寝室のドアにもたれて私を見る目と目が合った。

「……!」

 驚きすぎて声が出ない。全く気付かなかった。翔さんはいつものように優しい目で私を見ていたけれど、私が固まっているのを見て口角を上げた。

「……ただいま」

 静かな室内に、機械音が響く。隠そうとしたけれど、無駄だった。

「ね、それ、気持ちいい?」

 翔さんは、意地悪だ。

「使っていいよ。俺より気持ちいいかは保証しないけど」

 ゆっくりと、わざと私の緊張を煽るように翔さんが近付いてくる。そしてベッドに座った。ベッドが軋む音がやけに耳に響く。

「すずちゃん、イケないんでしょ」
「……っ」
「俺の指じゃないと、イケない?」

 翔さんの長い指が、髪を、額を、頬を、唇を撫でる。その度にピクンと体が揺れて、ハァハァとはしたなく肩で息をしてしまう。

「……ああ、これ、俺の服」

 翔さんは胸元を撫でながら、シャツに触れた。そして、見惚れるほど綺麗な笑顔で言う。

「シャツと本物、どっちがいい?」

 答えなんて決まっているのに。翔さんはやっぱり酷いひと。

「っ、かけ、る、さん……っ」
「ん……?」
「翔さんが、欲しい……」

 初めて口にした瞬間、羞恥で体がカッと熱くなった。でもそれだけじゃない。欲望って口にすると更に大きくなるのかな。私は翔さんの肩を押して、ベッドに押し倒していた。翔さんだ。本物の翔さんに触れている。柔らかい唇にキスをして、舌を差し込む。翔さんは自分からは動いてくれないけれど、応えてはくれる。舌を絡ませると、翔さんの唾液が媚薬みたいに私の体を更に熱くして。私はゴクンとそれを飲み込んだ。翔さんと自分を隔てるものは、シャツ一枚でも煩わしい。男らしい首筋や喉仏に舌を這わせながら、シャツのボタンを外していく。翔さんはされるがままで、だけど頭を撫でてくれたから。このまま進めてもいいんだと解釈して翔さんの服を脱がせていく。いつも翔さんがしてくれるみたいに。
 翔さんの体中にキスをして。既に大きくなっている自身を取り出すと、私は躊躇わずにそれにも舌を這わせた。いつも私を気持ちよくしてくれる翔さんのそれ。手で扱きながら、丁寧に舐め上げていく。手の中で震えるそれを咥え込めば、翔さんが私に言った。

「すずちゃん、俺の顔跨いで」

 と。電気がついていて明るいから恥ずかしい。躊躇っていると、翔さんの手が誘導するように私の腰を持つ。そして、そのまま顔の上に跨らせた。
 翔さんの指がそこを這うだけで、イキそうなほどの快感が私を襲う。翔さんのそれから口を離そうとしてしまうけれど、翔さんがそれを許さない。やんわりと頭を押さえられて、更に奥まで咥え込んでしまう。
 それは舌でも同じ。じっくりと、私の中心から溢れる蜜を吸い取りながらも頭はしっかり押さえられていて。気持ちいい突起を食まれれば、ビクンと体を震わせるものの口は離せない。くぐもった声を上げる私を、翔さんは容赦なく攻め立てる。皮を剥いて、剥き出しになったそれを吸われればすぐだった。

「っ、んんんんっ」

 翔さんのを咥えたままイッちゃうなんて。恥ずかしい、のに。止められないほど気持ちいい。

「すずちゃん、いっぱいイカせてあげる」

 私を四つん這いにして、翔さんは体を起こす。そして長い指を挿入した。それだけでゾクゾクと体が快感に震える。シーツを握って耐えていると、翔さんが中で指を折り曲げた。

「ふ、んんっ」

 そして掻き出すように指を動かす。自分の指じゃ届かないところを翔さんの長い指は簡単に刺激して。翔さんの匂いがする枕に顔を埋めて、私は液体が噴き出すのを感じていた。

「せっかくだからこれ、使ってみよっか」
「んっ、や、こわい、」

 さっきは胸にしか使っていなかったピンク色の機械を、翔さんは下の突起に当てる。そして阻止しようとする私の手を押さえつけて、機械を動かした。

「あああん!」

 ああ、どうしよう。怖いくらいに気持ちいい。馬鹿になったそこからは止めどなく液体が飛び出す。翔さんはそれを飲み干すように、そこに唇を当てた。ゴクリと動く喉仏に液体が伝っていく。やだ、恥ずかしいのに。またイッちゃう……っ

「か、かける、さん」
「ん、イッていいよ」
「っ、ああっ、あああっ」

 ビクン、ビクン。頭が真っ白になる。息が苦しい。放心状態になる私のそこに、翔さんは熱いのを宛てがった。

「っ、やっ、待って、まだイッて、」
「うん、ごめんね。多分連続でイくことになると思うけど」

 翔さんが言った通り。勢いよく入ってきたそれに、私はまた目を見開いてイッた。

「すずちゃん、ずっと潮噴いてるよ」

 翔さんが後ろから私を抱き締め、わざと耳元で囁く。両手は胸を揉み、時折乳首を弾いて。飛び出す液体が太ももを伝ってベッドに染み込んでいく。どうしよう、でも、止まらないの。イキっぱなしの体は痙攣して、掠れた声しか出ない。なのに翔さんは容赦なく後ろから私を犯していく。そういえば後ろからされるのは初めてかもしれない。奥まで来て、息苦しい。

「すずちゃんがこんなに俺を求めてくれてたの、嬉しい」

 翔さんの声も掠れてる。色っぽい声にきゅうんと下半身が疼けば、中の翔さんが震えた。

「……ほんと、エッチになったね。誰のせい?」

 翔さんしか、いないのに。当然答えを分かっている翔さんは、ふっと笑って腰を掴んだ。上半身を支えきれなくて、胸はシーツについている。必死でシーツを握る私を犯すように、翔さんは後ろから突いた。

「……すずちゃん、激しいのも嫌いじゃないでしょ?」

 翔さんは本当に、酷いひと。
 もう一度達した私のそこから翔さんは一旦それを抜いて、ベッドに横たわる。そしてぐったりした私を腰に跨らせた。

「すずちゃん、俺まだイッてないからもう少し頑張って」

 私の体重のせいで更に奥まで来るそれに、私は背を仰け反らせる。胸を揉みながら、翔さんは下から突き上げた。

「……俺ね、すずちゃん」
「んっ、ふぅ、ん」
「すずちゃんには優しくしたいけど、たまに壊したいくらいに滅茶苦茶に抱きたくなる。愛しくて」
「か、ける、さん……っ」
「だからすずちゃんのエッチな姿見たら、抑えられないよ。ごめんね、今日は激しくするよ?」

 翔さんの宣言通り、激しく攻め立てられる。息も出来ないほど、気持ちいい。翔さんはまた機械を取り出して、繋がっている少し上の突起に押し当てた。中からの刺激と、外からの刺激。一気に与えられると、簡単にイッてしまう。翔さんがそれを抜くと、勢いよく液体が飛び出して翔さんのお腹にかかった。痙攣する私の腰を掴んで、また翔さんはそれを挿入する。

「はぁ……、イキそ」

 翔さんの柔らかい唇から色っぽい声が洩れて、私は思わず体を倒し翔さんの唇を貪っていた。しっかりと抱き締められながら、下から突かれる。お互いの甘い声と唾液が、お互いの口に飲み込まれていく。

「っ、あっ、イク……っ」

 翔さんがそう言った瞬間。中で欲望が弾けて、私もその刺激に体を震わせた。しばらく抱き合ったままでいると、翔さんのそれがまだ強度を保ったままでいることに気付く。

「久しぶりだし……、もうちょっといいよね?」

 甘く微笑まれると断れないことを知っていて。翔さんは繋がったまま私を仰向けにし、また動き出した。私の体から出る液体と、さっき翔さんが吐き出した液体がぐちゃぐちゃになって混ざり合い、お尻を伝ってベッドに落ちていく。翔さんはそれを指で掬って、私の口に入れた。苦い味が口の中に広がる。でも翔さんの味だと思うとそれすらも愛しくて、私は夢中で指を舐めた。

「そういえば最近、指噛まなくなったね」

 翔さんがそう言って微笑む。確かに……そうかも。

「快感が怖くなくなってきたかな。いいね、そういうの。すずちゃんの体が俺の与える快感を受け入れてきた証拠?」
「っ、はずかしい、」
「俺を求めて一人でしてたくせに。ほんと、すずちゃんが愛しすぎておかしくなりそうだよ」

 優しいキスを落としながら、翔さんがまた奥で欲望を吐き出す。おかしくなりそうなのは、私のほうだ。恥ずかしいことも、全部全部。翔さんの前でしか出来ないから。目の前の翔さんを抱き締めながら、もっとと強請る私に。翔さんは嬉しそうに笑って動きを再開させた。

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