甘い言葉

 翔さんは私の手をしっかりと掴んで私を家まで連れて来た。玄関のドアを閉めてすぐ、正面から抱きすくめられる。

「……っ」
「すずちゃん、抱いていいよね」
「か、翔さん、ちょっと待っ……んっ」

 腰をしっかりと掴まれて、舌が唇を割って入ってくる。翔さんにキスをされただけで体が熱くなるのは、私が翔さんのことが好きすぎるからか。私に翔さんを拒む理由はない。一度認めてしまえば、あとは堕ちるだけ。

「寒い?でもごめん、今日はベッドまで行く余裕もない」

 いつになく余裕のない顔で、仕草で、翔さんは私の服を乱してゆく。コートも、ワンピースも、タイツも。その場に落とされた。冷たい空気が肌を撫でてぶるりと体が震えた。

「……すずちゃん」

 翔さんは自分のコートも脱ぎ捨てて、また私にキスをした。翔さんに包まれているところだけは温かくて。私はやっぱり翔さんがいないと生きていけない、なんて。そんな錯覚に陥りそうになる。
 キスをしながら、翔さんは私の下半身に手を伸ばした。下着の上から、長い指が侵入していく。それだけでゾクリと体が震えた。一度抱かれた記憶が、感覚が蘇ってくる。

「……すずちゃんは本当に悪い子だね」

 中心を撫でていた指を、自分の顔の前に持ってきて。翔さんはペロリとその指を舐めた。あまりの妖艶さに子宮が疼く。

「でも俺はもっと悪い大人だから」
「……っ」
「君が俺以外に抱かれても満足できないようにしてあげる」

 ギラギラと光る瞳は、私だけを捕らえて離さない。

「……俺の指見ただけで体疼くんでしょ」

 翔さんはその長い指で、私の瞼を撫でた。そして、唇、首筋、胸、お腹。順番に撫でてゆく。それは決して変な動きじゃないのに、明確な意図を持って私を撫でるから。

「ふっ、んん……!」

 私の体はゾクゾクと震え、それだけで絶頂しそうなほど。濡れた下着が張り付いて気持ち悪い。

「どうするの?仕事中、俺の指見て欲情するの?」
「っ、か、ける、さん……っ」
「こんなエッチな顔、周りに見せるの?」
「うぅ、や、やだぁ……!」
「そういうの、嫌いじゃないけど。やっぱり二人の時だけエッチな顔になるすずちゃんが一番好きだな」

 翔さんの指が、一気に下着を下した。

「ああ、もう挿れられそう」
「っ、や、待って、」
「また後でじっくりイかせてあげるからさ、今はすずちゃんが俺のものになったこと実感させて」

 翔さんの瞳に一瞬切ない色がちらついて。目を瞬かせた次の瞬間、圧迫感が腰を襲った。

「うあ、ああ!」
「っ、はぁ、相変わらず狭いな……」

 片足を持ち上げられて、恥ずかしい格好で翔さんに攻め立てられる。不安定な体勢で、目の前の翔さんにしがみつくしかなくて。必然的に更に奥まで繋がってしまう。翔さんは服を着ているのに私だけ裸なのも恥ずかしくて。指を噛む。その手を握り、翔さんは代わりに翔さんの指を挿し込んだ。

「こんな余裕ない姿、見せたくないんだけどな」

 私を必死で求めている翔さんの顔は、直視できないほど色っぽい。こんな顔、私以外に見せてほしくないなって心の底から思う。翔さんの瞳の中には、私が映っていた。目が虚ろで、口は半開きで。はしたないほどに翔さんを求めている。

「こうやってすずちゃんが受け入れてくれるなら、いいかなって思うよ」

 翔さんの首に腕を回すと、翔さんは嬉しそうに微笑む。両足を持ち上げられて、壁に押し付けられた。更に奥まで翔さんが入ってくる。気持ちいい。頭が蕩けそう。

「すずちゃん」
「んっ、ああっ」
「好きって言って」

 翔さんの柔らかい髪を握る。自分からキスをしたのは初めてだった。

「ごめ、なさ……!」
「っ、ん?」
「す、き」
「……」
「だい、すき……」

 口に出せば出すほど、翔さんを想う気持ちが胸を締め付ける。切なくなる。もう後戻りできないと分かっているからこそ、逃げ出したくなる。でも、翔さんは決して私を離そうとしなかった。甘い檻の中で、私は息もできないほどの愛に溺れる。

「すずちゃん、俺から逃げようとしないでね」
「あっ、んん、はぁ、」
「これから気持ちいいこといっぱい教えてあげる」
「か、かける、さん……っ」
「俺以外じゃ満足できない体にしてあげるからね」

 ゾクッとするほどの美しい笑顔を見せて、翔さんは私の一番奥で吐精した。
 その後、お風呂に移動してまた翔さんは私を抱いた。のぼせそうになったけれど、必死で翔さんに手を伸ばした。翔さんは宣言通り、その後のベッドでも私の体を開いていった。翔さんは今までもこんな風に情熱的に女の人を抱いたのかなって。一瞬ちらついた思考は膨らんだ。

「すずちゃん、好きだよ」
「何も考えないで、俺だけ見てて」

 懇願するような言葉に、瞳に、私はまた溺れていく。翔さんが奥に吐き出した白濁がドロリと垂れた。それを掬って、翔さんはまた奥に押し込む。

「……すずちゃん、俺金だけはあるから」
「っ、え……」
「……ううん、まだいいや」

 また始まった律動に、私は掠れた声を上げる。二人だけの濃密な夜は、熱を持ったまま更けていった。

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