thought side Isogai-Extra edition-

憧れや、尊敬や、羨望や、親愛や。形は色々あるけれど、どれも当てはまってしまうから悩む。その人に向ける思いは憧れ。向ける視線は尊敬。追う心は羨望。向ける想いは、親愛。なのかもしれない。


その人は誰にでも優しい。でも、全てが優しいわけじゃない。ボーダーラインをちゃんと引いていて、節度ある優しさを与える。


その人は綺麗な人だ。みんなは気付いていないかもしれない。いや、気付いている人は数人くらいはいるかもしれないが。俺たちが友達同士と笑って話している時や、頑張った成果が現れた時、美味し物を美味しく食べている時。そんな時優しく笑って見守る姿はとても綺麗。


その人は可愛い人だ。直球勝負に弱くて、面と向かって愛の告白なんてされた時には慌てている。烏間先生に迫られる時なんてどうしたらいいか分からずに後退る。イリーナ先生からはなかなかそういう事をされないからサラーっと流しているが。





「……ふむ…」



なんてことを考える俺、磯貝悠馬。そして、そんなことを思われているとも知らずに俺の横に座る、この人。




「眉間、皺寄ってるよ」

「え!」

「ははっ、悩み事?珍しいね。そんな難しい顔してるの」

「う…えっと…」



ここは教室。でもガランとしている。それは今が放課後だから。残っている生徒もいるけど、みんな校庭で殺せんせーと遊んで(と言う名の暗殺)いる。




「…まだ寄ってますか?」

「ううん。寄ってない」




何故俺と柴崎先生が2人でいる理由とは。
まず、今日はバイトもなく母親も仕事が休みであるということで学校に残って勉強をしようと思った。
けど、問題に躓いてしまい頭を悩ませていた。うーんうーん…と考えているところに柴崎先生がやって来た。

「あれどうしたの?」

から始まり、

「問題に躓いてしまって…」

となり、

「熱心だね。よかったら教えるよ」

からの、

「本当ですか!ありがとうございます!」

そして、

「いえいえ」

となった。そして今は粗方解いて休憩中。休憩中なのにさっきのあれを悶々と考えていたせいで眉間に皺が寄ってしまっていたらしい。恥ずかしい。





「………」

「(でも、嘘じゃないしな…。本当にそう思うし…)」

「…………」

「(優しくて…笑うと綺麗で、でも強くて…。あ、でも怒る時のあの笑顔は怖いかな…)」

「…磯貝くん」

「? はい」

「俺の顔に何かついてる?」

「へ…?」

「凄い見てくるから、さ」




頬杖つきながら言う柴崎先生を見て、そういえばずっと体は前を向いているのに顔は先生を見ていたことに気づいた。



「え、あ、え!?あぁごめんなさい!すみません!」

「え?あ、いや、そんな謝んなくていいよ!どうしたのかなって思っただけだし」


慌てる磯貝くんも珍しいなぁ、なんて言われて顔が熱い。あぁ恥ずかしい。落ち着こう自分。




「でもたまにはネジも外さないとな」

「え?」

「磯貝くんって、周りからしっかり者とか頼れる人とか言われるタイプじゃない?」



確かにそうだ。兄弟の面倒も見ているせいか、自分がしっかりしないとと思うし、クラス委員だからピシッと立っていないと、なんて無意識に考えてしているところがあるのかも。




「人に頼られたりするってことは、それだけ周りから信頼があるってことだけど、息つく暇もなくブレーキ踏まずに疾走し続けることって出来ないもんだよ」

「そうですよね…」

「見ている分では、その立場を辛いとかしんどいって思ってるわけじゃなさそうだからあまり心配はしてないけど、たまには寄りかかりなね」



寄り掛かる。あまり考えたことのないことだった。いや、でもE組に来てからは少し周りに寄り掛かることを知ったかもしれない。一人では出来ない。みんなと力を合わせてすることの大切さを学んだ。




「…どうしてか、本校舎に用事があって顔を出して、その時たまたま生徒の顔を見るとなんとも言えなくて」

「え…?」



体は俺に向いてるけど、顔は前を向いている。手のひらで顎を支えて、少し目は俯き加減。




「俺は別にこの学校のシステムにどうこう口を出す義理はないししようとも思わない。けど、E組のみんなを見て本校舎のみんなを見ていると、こうも顔つきが違うのかってね」



柴崎先生の目にはどう映っているんだろう。俺たちと、本校舎の生徒は。どう違って、どんな顔をしているんだろう。





「E組のみんなは、最初こそバラバラだったけど…。今は仲良くてあんまり裏表ないだろ?」

「そうですね…。裏も表も隠す必要がないというか…皆したいことをして、言いたいことを言うって感じなので」

「それがね、本校舎の生徒にはない気がして」

「あ…」



先生の言うそれは、俺も感じたことだった。ここに来て、1、2年の時とはガラリと変わった環境になってから気付いた。あの頃は、なんとなく皆上部付き合いで、どこか蹴落とし合いがあった。表には、出さないけれど。



「純粋に競い合える仲間が居るからこそ、成長するもんだしね。人は」



そう言って笑った柴崎先生。




「あと、競い合いながらも寄り添える人ね。言葉なんてなくても凭れられる人」

「寄り添える人…。相棒みたいな感じですか?」

「んー…まぁ、そんなのかな。心の友みたいな」

「じゃあ俺は前原ですね」



頭に浮かんだのは前原。付き合い長いし、一緒にいて楽だ。あっちも俺に弱音を言うし、俺も言う。喧嘩はあんまりしないけど、落ち込んだら支えてくれるし俺も支える。支えれてると…思う、多分。



「…ふふっ」

「え?」



小さく笑う声がして見れば、口元に拳を当てて笑う柴崎先生。



「ちゃんと寄りかかれる人居るね。安心した」

「あ…と…」

「君達コンビネーション良いし、最適だね。そっかそっか、前原くんか」

「はい…。かな?って」

「きっと前原くんも思ってると思うよ。…あ、そうそう。前原くんといえば…」

「なんですか?」

「ちょっと烏間に似てない?」



前原が烏間先生に似てる?……似てる?…え、誰が…え、前原が?烏間先生に?


「……………………え!?ど、どこがですか!?」

「なんだろ…、咄嗟の男気?」

「…あ、なるほど…」


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