thought side Isogai 2-Extra edition-

咄嗟の男気なら、うん…似てる、かな?多分。



「前原くんって、普段あんな感じだけどやる時はすごい真剣で真っ直ぐだろ?切り替えが早いっていうか」

「そうなんですよ。一回スイッチ入ると凄くて」

「そこがね、似てる」

「え、烏間先生そんな感じなんですか?」

「うん。烏間も休日仕事もすることも何にもなかったらコーヒー片手にボーッとしてるんだけど、いざ携帯に電話が来ました、仕事ですってなったら空気ガラッと変わるんだよね。切り替えの早さ?見ててビックリする」



この間もねー、なんて話を聞いていると、やっぱりこの2人は仲が良いんだなぁと再確認。正直話してる方が楽しくて、もう勉強は良いやって思ってる。こんなのんびり2人で話すなんてないし。折角ならこの時間を大切にしたい。




「で、ベランダで水飲んでたら後ろから急に出てくるからビックリしてさ」

「気配に気付かなかったんですか?」

「家にいるのに消すんだよ。性格悪いなぁって思った。声掛けられて驚いて水落としちゃったしね」

「…それ見て烏間先生笑った…とか?」

「磯貝くんよく分かるね、それそれ。ちょっとムカついた。誰のせいで水落としたと思ってんだって」

「なんて言ってましたか?烏間先生」

「気を抜き過ぎだって。自分の家にいて気張る?普通緩めない?」

「ははっ。面白いですね、それ!でも自分の家だと気緩みますよ。俺も緩みます」

「それが普通なんだよ。背中向けて歩いて行くからその背中思いっきり殴ったけど、あんまり堪えてないのがね、落胆する」


プライベートでの烏間先生ってそんな感じなんだなぁ。完全に気を許してる。柴崎先生に。普通なら背中だって殴らせないよ、あの人なら。




「あ、そうだ。一つ聞いて良いですか?」

「良いよ」

「2人とも仲良いですけど、喧嘩ってなかったんですか?」


俺の質問に柴崎先生はキョトンとした。あれ、変なこと聞いたかな…?



「あー、あるある」

「え!?あるんですか!?」

「一回ね」

「…ちなみに、どんなことで…?」



思い出しているのか、少し笑っている。笑うような喧嘩って、なんだろう。想像がつかない。苦い顔になるなら分かるけど。




「んー…心配かけたくなくて黙ってた事を怒られた、かな。あれは喧嘩なのかなんなのか分からないけど、俺と烏間ならあれは喧嘩だったらしい」

「黙ってたのは…柴崎先生ですか?」

「そう。…あれは、15の時だったな。ほら、前に話したと思うけど俺の父親が亡くなった話」

「あ、はい」

「高校に上がって、初めての冬が来た時に亡くなってね。凄く寒かったのは憶えてる。葬儀だったり親戚関係だったりでバタバタしてて寝る暇がなかったんだ。葬式お通夜も終わって、さて明日からまた日常生活に逆戻りだって思ってそのまま何も変わらず1週間過ごしてたんだけどね」


そう言って話す柴崎先生は何年も昔の事を思い出している顔だった。



「周りに心配されたけど、なんともない大丈夫だって言い張ってたら烏間に怒られて。何が大丈夫だって。実の父親亡くして、お前の事だから家族皆を自分が守らなきゃならないって背負いこんで、泣くのも我慢して首締めてないかって」


目を細めて、少し薄く笑って、




「俺もまだ子供だったから、言われた事が図星で…。だからお前に何が分かるんだ、父親が遺したものを託されたのは俺なんだから仕方ないだろって言い返したっけ…。…ふふ、そしたらなんて言ったと思う?」

「え?えー…んー…、」


烏間先生が言いそうな言葉…、




「半分渡せ、とかですか?」

「あー、惜しいかなぁ。でも似てる」

「似てますか?え、なんだろう…」

「…それなら俺が背負ってやる」

「え?」

「そう言ったんだよ、あいつ」


馬鹿だよね。託されたのは俺だって言ってるのにさ。なんて言うけど、その顔はその言葉が嬉しかったんだと言っているようにしか見えない。




「背負いこんでそんな辛そうな顔見るくらいなら俺が全部代わりに背負ってやる。その代わり泣くのは我慢するな。泣いた後はいつもみたいに笑え。ってさ。言われた時は唖然だね。何言ってんだろこいつ、って」



ぅわ…、烏間先生、カッコイイ…!男前だ男前だと思ってたけどその頃からとは…!



「でも、その後全然出てこなかったくせに涙出てきて…。背中向けてくるから何かと思えば、人が来ないか見張っといてやる。だから泣きたいだけ泣けって。もうなんだこいつ、って思ったけど予想以上にその背中が頼もしくてね」


泣いた後は、笑ってやったけど。そういう柴崎先生。昔から、2人はそうなんだなぁ。支えて、支えられて。簡単には築けないその関係を、何年もかけて築き上げてきて今があるんだな。




「…柴崎先生にとって、烏間先生は大切な人なんですね」


ポロリとそんな言葉が自然と口に出て、出た後に言ったことに気付いて慌てて口を片手で覆った。



「うん。きっとそうかな。…大切な人、かもね」


ああ…、…綺麗だ。夕日が窓から差し込んでて、それを後ろに優しく笑う先生の横顔はとても綺麗だった。幸せ者だなぁ、烏間先生は。こんな人にこんなに想われてて。羨ましい。





「…やっと見つけたぞ」

「おーい!磯貝!帰っぞー!」


2人して窓の方を見ると、烏間先生と前原が立っていた。

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