8歳 / 夜の葦
副題:とある忍者の禁術開発(主人公:扉間)

 三千世界の色彩が生き物のように輝く光の海を泳ぎながら、遠く離れてしまった世界について想いを馳せていた。
 とある○○の禁書××っていうライトノベルがあるんだけど、知ってる?大学に入ってから本格的にアニメやラノベを読み始めたわたしが、まず最初にそういった友だちから貸してもらったそういった系のラノベが、所謂『とある』シリーズだったんです。前世で、花の女子大生として合コンやバイトやサークルや旅行や実験や実験やレポートや実験やレポートや学会でキャッキャウフフしていた頃、ネット小説やラノベが次々アニメ化していって、そこでの流行りのラノベといえばMMORPGに入り込む系、そして主人公が強くてやれやれ系だった。
 今はどうなっているんだろう。わたしがJDだったあの頃から9年が経った今、ラノベという枠が果たして生き残っているのかすら怪しい。サブカルチャーの主流や、今期覇権アニメも気になることながら更に気になることが一つある。ハンターハンターだ。
 あれはどれくらい進んだんだ!?まさか完結はしてないだろうが、連載再開したのか?!流石にしてるよね、だって9年も100%休載は流石にないし!ああ気になる、ハンター完結前に転生したからには絶対再び向こうの世界に戻って続きを読んでやる。絶対絶対、こっちでいくら死のうと向こうでH×Hの最終回を読むまで死んでたまるか。そう思います。
 さて、最終回が近くなるにつれ色々と批判も強くなったらしいナルトだけど、岸本さんの描く人体のリアルな動きや複雑な気持ちを表現する繊細なタッチ、世代を越えて受け継がれる想い、互いに想い合っているのに戦わざるを得ない世界、そして一貫してナルトが主人公として頑張り続けたあの作品がわたしはとても好きだった。
 だから、仕方ないとはいえ、自分がその愛すべき側面を一つ粉々にぶち壊そうとしていることを非常に残念に思う。滅んでこそのうちは一族、闇堕ちしてこそのサスケ、薄幸の佳人を地で行く天才だからこそのイタチなのに、その大前提であるうちは一族皆殺し事件をどうにか回避しようと考えているのはとても無粋なことだ。
 失われること、その過程に美しさがある。
 失明することで本来の力を発揮する写輪眼が、うちはという一族を端的に表している。親しいものを亡くすこと、愛を失うこと、死ぬこと、殺すこと。その絶対的な喪失こそが人を追い込み感情のタガを外してしまう……足すことではなく、減らすことで力を得るうちは一族は、まさしく美そのものだ。
 そう、うちは一族は何かを失い続ける人生を決定づけられた、哀しい遺伝子の奴隷なのかもしれない……(キラキラした粉のエフェクト)(ベルばらみたいな画風のワンカット)

--なんちゃってね!その幻想をぶち壊す!

 土の中に潜ってかれこれ2時間、ちょっと酔ってきました。

--コゼツ…さん、運転荒くないですか……?
--運転?そうかな、普通に走ってるけど。
--いや明らかに今ワイスピの如き急旋回あった。しらばっくれてんじゃないよこちとら富士急で死ねる絶叫苦手マンなんだよ。

 あー、富士急は盛ったな、多分スペースマウンテンくらいだ。あれ一回や二回ならイエーイで楽しめるけど、エンドレス(現在二時間経過)となると話は別である。
 スペースマウンテンへようこそ!スペースマウンテンは暗闇をハイスピードで急旋回・急上昇・急降下・急停止するスリリングで揺れの激しいジェットコースタータイプのアトラクションです。首、脊椎に障害をお持ちの方、心臓の弱い方、高血圧の方、体調、気分のすぐれない方、現在ご妊娠中の方はご搭乗していただく事が出来ませんので、ご了承ください。
 こんなアナウンスが必要なあれになりつつありますよ。だって明らかにスピード違反だもん!気持ち悪い!地中交通法守って乗客を安心安全に目的地まで届けてください!

--酔ってきたし、緊張しすぎて吐きそう……。
--このままゲロ吐いたらどうなるんだろう、気になるなぁ。
--全然気にならない、やばい気持ち悪い。ちょっ、あっ今信号無視しましたよ!パトカァー!パトカーはいませんかぁ!
--本当にうるさい奴だなサエは。

 今心なしか身体が一回転したような気がした。FUJIYAMAのつもりだろうか、だが許されない。

--今度コゼツの胃の中に無理矢理でっかい本押し込んでやるからな。
--うわ出た!パワハラ!
--はぁ〜〜〜?ボクの胃の中には今も成人男性1人の遺体が入ってるんですけど!文句言うなよオリジナル!
--遺体じゃない!遺体じゃないから!
--お前のレゾンデートルは人間じゃないんだからそれくらいできなきゃダメでしょ。
--なに此奴ムカつく!サエもうこいつ首にしてボクをオリジナルにしなよ!
--何同じ個体同士で喧嘩してんだよ大人しくしろよ!こっちは気持ち悪いんだよ!
--うわ〜、サエってこういうとこあるよね…我儘……。
--マダラのとこ戻ろうかなぁあっちの方が労働条件いいし。
--強いし。
--はいはい仲良しで結構!!うっ、うえぇぇぇ……!

 残念ながらもうマダラは死にましたぁ〜!今はオビトの時代だコラ!
 まあこんな感じで、ワイルドスピード地中ミッションを8時間ほどぶっ続けてドドンパも真っ青な体感アクションにへろへろになったころやっと湯の国に入った。途中の息継ぎで空気じゃなく胃の内容物をぶちまけるわ、上下感覚がなくなって三半規管がグワングワンになるわ、本当に大変だった。こんなことなら日帰りとか無茶言わないで昨日から木の葉出て先に湯の国入りしてればよかった。

「死にたい…気持ち悪い………折角新しく買ったマントがゲロに……」
「お父さんにお金借りてまで買ったのに全く親不孝なヤツ」
「いや親不孝についてはお前らに言われたくねーってばよ」

 現在進行形で超絶親(白ゼツオリジナル)不孝してる奴が何を言うか。
 人気のない森の中で土から出て、真っ暗の中手さぐりで水のせせらぎや川の匂いを辿り小川を見つけて口を漱ぎ、突入前最後の休憩をする。連中の跡をつけているイプ5から、木の葉の護衛がいなくなった代わりに雲からの護衛が合流する予定になっていることを聞き、突入のタイミングに頭を悩ませた。

「いつ行くかな〜。話してる最中に合流されるとクソ面倒くさいし、なるべく人数少なくして判断の余地を与えないよう圧迫面接したいんだけど」
「出ていくときはボクを中に入れていくの?」
「うん。壁からにゅ〜ってやりたい」

 緊張が余計吐き気を催して、あとちょっと、あとちょっとここで休んでいたいとなかなか腰を上げることができない。しかしやらねばならぬときはやるしかない。ええいままよと立ち上がり、コゼツを中に入れて地上を走り出した。同じく地上に出たイプ2が、口からヒザシの足が出そうになるのを押し込んで嫌そうな顔で後ろからついてくる。

--どう?わたし不審者に見える?
--ただのマント来たガキだね。
--だよね……。

 8歳だもんね。変化しようかとも思ったけれど、変化の術はかなり簡単な術だから使者やその護衛のような優れた忍の目では簡単に看破される。それならば最初から、変化無しで出て行ったほうがいいだろうと思った。
 しばらく走っているうちに森から出て、湯の国歓楽街の光が暗闇の中からチラチラ見えてくる。コゼツの案内で、使者が泊まっている宿に向けて一直線に走り抜けると、冬の冷たい夜風がマントの中に入り込んで震えが止まらなくなった。こんなに震えていたんでは格好がつかない。

--サエ、凄く寒そうだよ。ボクを着る?
--着れるの?アレってこう、ちょっと特殊な個体だよね。えーっと、グルグルって名前だったっけ?
--別に名前は他の誰かが勝手につけるものだから知らないけど、確かにボクじゃサエの服にはなれない。でもガンマならできるよ。
--あーそれじゃあお願いします。

 歓楽街の真ん中を流れる用水路、その橋の下で立ち止まった。イプ2がコンクリートの中に沈むのと入れ替わりに、ガンマが姿を現す。

--うわ、ガンマの身体がなんか…グルグルになってる……怖い。
--サエにも怖いものってあるんだね。
--怖いものだらけだよ!

 大きい黒い外套を脱ぐと、素肌が外気に晒されて凍えそうだ。歓楽街の中、影になっている橋の下は真っ暗で、誰もこちらに気付く人はいない。いたとしても、酔っ払いが橋の下でなんかやってらぁ程度だった。
 ガンマの身体がカッパリと解けて、触手のように蠢く身体に後ろ向きで近づくと、スルスルとまとわりつく。思ったよりも結構ぎゅっと身体にフィットするそれは、ウェットスーツを着たような圧迫感があって、着心地良い。

--おお〜……着圧ダイエットみたい…。

「どう?」
「あ、ガンマとは口で喋らないとダメなんだ」
「ボクはただサエとくっついてるだけで中に入ってはいないからね」

--そういうこと〜。震え止まった?
--止まったかな……。

 ウーンやっぱり白ゼツの身体って不思議だ。最初は冷たいけど、でもじっくり人肌で暖めると案外保温性はいいようだ……比熱が大きいのかもしれない。わたしは腕の方までグルグルと覆う柔らかくて少し暖かいそれをツンツンつついたり伸ばしたり押したりして、しばらく遊んでいた。
 そして、オビトがリンの死を目撃したときと全く同じような恰好で、橋の下から出る。夜空には白い半月が出ている。
 身体の中にはコゼツがいて、身体の外側をガンマが覆っていたが、それでも、自分は一人なんだという意識が根底にずっしりと横たわっていた。その意識がわたしを冷静になせた。何をするときも全て、自分の意思で決めて、自分が動かなければどうにもならないということは、即ちわたしがあくまで一人であることの絶対的な事実だった。

--行く。

 イプ5が指し示す宿まで、あと1km。用水路の上を駆け出して、夜の街に消えた。
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