8歳 / 雲隠れの里B
副題:四代目雷影って何かと壁を壊す癖が可愛い

 四代目雷影エーと綱手姫のカップルもかなり好きなんだけど、どうしても自来也が死んだあとの「馬鹿野郎」を越えられない気もして、うーむどちらも旨みがありますなぁ。綱手は歴代最高のクソ火影と一部で罵られているらしいけど……カツユ様かわいいしね、わたしはいいと思います。あ、加藤ダンとのあれやそれも気になる。
 さて、図書館で雲隠れの資料をかき集めて散らかして、レポート提出期限を過ぎた二徹目のような様相を呈しているわたくし東雲サエですが、今過去に記したノートに重要な間違いがあったことを発見した。

”……――雲隠れと同盟を結ぼうとした木の葉は裏切りにあい、囮となって金角銀角部隊と戦った扉間死ぬ。”

 この一文が間違えていた。雲隠れは裏切ったのではなく、金角銀角がクーデターを起こし、二代目火影扉間と二代目雷影エーがそれに巻き込まれたのだそうだ。
 しかし、わたしが前回参照した文献は木の葉情報部出版の報告書、そして今回参考にした文献は火影全集第2巻、千手扉間の巻だ。
 火影全集とは、歴代火影の死後彼らが直接携わった任務を一部を除き載せていて、その生き様を綴り後世に伝えたいと思って現火影が出版を依頼したらしい。ま〜ヒルゼンも大概千手兄弟好きやな。そして悲しくも三巻目より先に四巻目が出版されるという異例の事態……悲壮感すごいからせめて三代目のは二部構成にして、四代目生前のころのを第一部とか名付けて出せばよかったのに…四代目のが先に出るのほんと切ないよ………。
 さて、木の葉情報部出版の報告書と、ヒルゼンが直接依頼し執筆監督も務めている火影全集とで、事件の書かれ方が大幅に違う。
 事件後、雲隠れから発表された文書にはこの一文がある。

”木の葉隠れと雲隠れの同盟締結の調印式にて金角銀角兄弟がクーデターを起こし、両者の影がそれに遭遇、騙し打ちに会い同盟は破棄される”

 このクーデターでは、二代目火影だけでなく二代目雷影も騙し討ちに会うが、扉間は瀕死に追い込まれその後死亡したのに対して二代目雷影はその後も生きていた。以上を踏まえると、

@情報部……この金角銀角のクーデターに巻き込まれたていである雲隠れが、本当は木の葉との同盟締結をやめて扉間を抹殺するための工作を行っていた、と結論付けた。
 ヒルゼン…何らかの理由で火影全集に事実をそのままに(=雲の発表の通りに)書き記した。

A情報部……雲隠れ上層部及び雷影は本当にクーデターとは無関係であり金角銀角のやらかした事件に巻き込まれただけだが、雲隠れに裏切られたという事実が残った方が何かしら得をする誰かが木の葉情報部に息をかけて、事実を歪曲して残した。
 ヒルゼン…上記の事実を知っていたため、間違った歴史が伝わることのないよう、自分で執筆監督した本に真実を書き記した。

 どっちかが事実を改変し嘘をついている。ナルトっぽいストーリーなら完全に後者だけど、問題はこの文献が木の葉情報部から出版されていることだ。
 木の葉情報部は、一次情報を決定する学術的に重要な機関。事実をありのままに記録することが彼らの最も重要な仕事のはずなのに、そこで火影の見解とズレがあるのは困る。これが前世なら、まず信用に足るソースは情報部ってことになるが、この世界の場合ヒルゼンが比較的良い人であることと、木の葉にある機関の幾つかが腐食している可能性が高いことから、そこが断言できないのが辛い。
 今まで正しい情報源として情報部出版物を使ってきたけど、それがもしかしたら、1%の可能性でも誰かの手心が加えられているかもしれないっていう猜疑が生まれると今後の情報収集にも支障が出るのだ。
 わたしはノートに『木の葉情報部?』とだけメモして本題に入った。
 今図書館に来ているそもそもの目的は、

@日向ヒナタ誘拐事件のとき、雲隠れには本当に木の葉と戦争する準備があったのか。
A雲隠れが頑なに軍備拡張を進めるのはなぜか。
B雲との取引作戦の成功率を知る

 この二つの疑問の答えを出すことなので、まず一つ目からこなした。
 雲隠れが同盟締結のために木の葉に来た裏で日向ヒナタを誘拐したのは、使者を殺させてそれを大義名分に木の葉に戦争すると脅し、本命の白眼=日向ヒアシを得るためである、とわたしは考えている。だって、普通はそう思うだろ。本気で宗家の娘を、あんな少人数で拉致できるなんて考えていたのだとしたら、バカです。まさか使者が独断専行したわけでもあるまい、絶対に雷影からの勅命が下っていたはずだ。
――と、第8回作戦会議のときは思っていた。
 しかしよくよく考えてみると、

”ビーをサスケに殺された!お前ら絶対に協力してもらうからな!!でもお前らのことは根本的に信用してねぇぞ特に暁のことを散々利用してきた岩隠れ!!!あ?白眼の件?…それよりサスケの情報を教えろ木の葉!!!”

って具合に、四代目雷影は自分がやったことを棚に上げて他人の罪を追及する我儘なところがある。だから、この日向ヒナタ誘拐事件からの一連の事件なんて最初から考えていなくて、

”同盟締結の裏で白眼を取ってこい!”

って命令して、それが失敗したら

”使者が殺されただと?!許せん!!戦争だコルァ!!”

って激高した雷影を、その右腕だか左腕だか知らんが部下が宥めて、”まあまあ雷影様、戦争はダルイっすから代わりに宗家の白眼を貰うってことでイーブンにしましょうよ〜”ってやったような気がしてきた。
 ものすごくあほらしいというか、お前それでも忍か?バカなの死ぬの?って感じのノリだけど、実際四代目雷影がそういうノリであることは読者であるわたしが一番知っているので仕方ない。と、なると、雲隠れは賭けとかそんなこと考えてなくて(勿論雷影以外のヤツは”戦争回避頼むよ木の葉!”って思ってるかもしれないけど)最初っからよろしいならば戦争だ、ってなったのかもしれない。まだ木の葉が死体を渡すかどうか決める前に、雲は国境近くに部隊を展開して超ノリ気で構えているもんだから、それを見た木の葉暗部が急いで上層部に伝えて一触即発!雲のヤツあんなクソみたいな言い分で戦争始める気ですよ、と里内大慌てになる……こんな感じかもしれない。波風ミナト並のかもしれない運転で厳しい……。

@日向ヒナタ誘拐事件のとき、雲隠れには本当に木の葉と戦争する準備があったのか。
→あった85%、使者の独断専行10%、ない5%?

 次はA雲隠れが頑なに軍備拡張を進めるのはなぜか。
 雲隠れが今まで起こした大小さまざまな争い、戦争を調べ上げ、統計をとってみてわかったことは、エクセルの利便性………じゃなくて、内部での小競り合いが5%ほどしかないことと、殆どの戦争を雲側から仕掛けていることである。
 雲隠れで身内争いと言えるような抗争は、金角銀角兄弟のクーデター以降起こっていない。それに対して、マダラが襲ってきたりうちはを滅ぼしたり大蛇丸に木の葉崩しされたりペインに襲来されたりオビトに月の眼計画されたりと、木の葉は随分身内出身(ペインは自来也の弟子なだけだから微妙)の奴らと対立している。自己犠牲……うーむ深いな〜〜闇があるなぁー(笑)
 また割合は少ないが、雲隠れが他国に攻め入られたり喧嘩をふっかけられた理由として挙がっているのが、工業技術や忍術を奪うためだった。
 上記以外は全て雲から攻め入ったり奇襲したりして発生している。更に、雲隠れはまだ第一次忍界大戦も行われていない頃、九尾を捉えようとしてそれに失敗し少なくない犠牲者を出していることも載っていた。そう言われれば、金角銀角は九尾の腹の中で肉を食っていたからチャクラを持ってた……みたいな展開あったような気がする。
 以上のことから雲隠れは昔から他国から狙われるほどの軍事力を持っており、彼ら自身軍備強化のために様々な試みをしていたことが分かる。四代目雷影に始まった話じゃない、もはやお家芸だ。それじゃあ何故そんなに力を得ておきたいのか?と思い、その地理的環境や里の人々の暮らしなんかも調べてみたが、少ない文献には特に飢饉があったとか住みにくいとも述べられていなかった。

A雲隠れが頑なに軍備拡張を進めるのはなぜか。
→不明。強いて言えば里の皆を守りたいから?

 事実無根なので痛いところだが、類推するとそうなる気がする。仲間が犠牲になるたびに戦争を仕掛ける理由も、力を求める理由も、仲間想いだから◎一件落着はい解決。嘘やろお前ええ加減にせえよ!
 第二次忍界大戦全集には、四代目雷影の父三代目雷影がなくなったのは第二次忍界大戦の最中で、一万の兵と三日三晩戦い続けて仲間を逃がした、とある。この強い”仲間想いの情”とそれで死んだ父を見てきた雷影は、父から受け継いだその情を頑なに守ると決めたのかもしれない。
 ま、そうならそうで今のわたしにはとても都合がよい。

B雲との取引作戦の成功率を知る

 仲間想いだろうが軍事力保持第一だろうが、@とAからもたらされる答えは以前の結論と変わらない。
 ”雲隠れは軍事力を保持するため / 仲間の死に報復するため、謎の組織と取引をして後々木の葉と関係が拗れるデメリットより、白眼を得るメリットを優先する。”
 この仮説を信じよう。
 ノートを閉じて一息つくと、物凄く肩が凝っている感じがして、HHのフィンクスみたいにぐるぐる腕を回してみたが、実際凝ってはいなかった。図書館の外は生ぬるい暴風が吹いていた。
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