7歳 / 暗中模索B
副題:本屋さんとか図書館って腹痛になるよね。

 アカデミー生は基本的に忍術アカデミーの中の図書館を利用する。木の葉中央図書館は、隠れ里に住む人々が生涯学習の場として利用するほか、下忍以上の忍が自分の専門外のことを学ぶ際の足掛かりに利用しているようで、わたしのような子どもは少なく大人が多かった。
 閲覧レベルごと文献の保存場所が違うらしく、館の受付以外にも、C・Bレベルの保管庫の前には受付の忍が一人待機している。どうやらAレベルの文献は更にその奥にあるようだ。
 S〜SSSレベルの文献はここの建物にはないのか…。そういえば原作で、雲隠れの忍がサスケや暁の情報を得ることを許可されたとき、火影岩の下にある書庫で調べものをしていた描写があったから、最高クラスの文献はあそこにあるのかも。禁術は火影邸かな?秘伝忍術に関する書物はさすがに一族ごとの蔵や倉庫に厳重に保管されていそうだけど…覚えてないな〜。
 でも、自分の頭の中の記憶を探る、みたいな術は探せばあると思うし、禁じるほど危険な術とも思えないから、この建物の中にある気がする。
 まあ、一つ目の目的は早速潰えてしまったので下忍になってから地道に探すことにしよう。
 次は、木の葉の里創立からの歴史だ。

「すみません、昔の新聞ってどこにありますか?」

 受付のお姉さんに聞く。

「はい。えーとB234〜236の棚の近くに、ラックがあります。そこにここ1カ月の新聞があって、そももっと昔のものは年月日を指定してくださればこちらで用意しますよ」
「えっと、60年分くらい見たいんですけど……」
「あら、そういう……ちょっと待ってくださいね」

 数分後、倉庫まで案内されたわたしは、歴史書数冊を参考に黙々と新聞を読み始めた。
 恐らく上層部に情報統制されているだけあって、情報はオブラートに包まれている。しかし、その時は伏せられていた情報が時効となって、報告書や歴史書に載せられ時が過ぎてから発行されるので、当時の空気を感じ取ることはできる。
 一国一里システムが出来上がった後、忍五大国で第一次忍界大戦が始まった。4年後、休戦協定の締結と尾獣分配によって戦いは終止符を打つが、その後雲隠れと同盟を結ぼうとした木の葉は裏切りにあい、囮となって金角銀角部隊と戦った扉間が死んだ。その後猿飛ヒルゼンが三代目火影に就任し、下忍から中忍に上がる基準を決める中忍試験方式が採用されたり、アカデミーが増築されたりと十数年間は平和なようだ。しかしこの間に裏でどんないざこざが起きたか、想像に容易い。さぞかし忍大活躍だったことだろう。
 そして大戦終了から20年後――今から24年前、休戦協定を破って攻撃し始める国がでてきて第二次忍界大戦が始まる。以前作った年表と照らし合わせると、14年間続く二回目の大戦の間に主人公の親世代が忍として主力になっていったり、伝説の三忍という呼び名ができるほど戦地で活躍したり、カカシ世代が生まれたり、長門たちが自来也に弟子入りしたりするようだ。
 この第二次忍界大戦の最中、どうやら渦の国とやらが滅亡したらしい。渦の国産まれの人たちはみな封印術に長けていため、多くの国に狙われ、殺された。各国に散りじりになったとある。
 あー、クシナがナルトと喋ってなんか色々思い出話するターンが原作であったな。そこでそんなような話を聞いた気がする……あやふやだけど…。
 しかし、千手柱間の妻うずまきミトや、波風ミナトの妻うずまきクシナ、そして雨隠れのうずまき長門、そして香燐など、うずまき性の人があちらこちらにいたのはそういう理由か。ミトが九尾の人柱力ってことは、木の葉はさりげなくうずまき一族と縁があって――利用するために縁を作って――滅亡する前から交流があり、その後もうずまき性の人を保護してきたのかもしれない。そういえば、ミナトがクシナを助けた事件、あのときクシナを誘拐したのも雲隠れだったような。あれ?違った?

雲隠れは特に木の葉と因縁深い?
→・同盟締結を裏切りそのせいで扉間死ぬ
 ・人柱力のクシナ誘拐する

「ふむ……、…あ?」

 ヒナタ誘拐事件ってもう終わったっけ?アレも雲隠れじゃなかったか?うむ〜〜〜昔すぎて覚えてない…ネジをナルトがアッパーするとこしか覚えてない……。
――さて思考を戻そう。
 そして、”忍の戦いは短い”と言われているにもかかわらずその長すぎる戦争で疲弊した各国は理由もうやむやに第二次忍界大戦を終結させるが、お互い禍根が残り、また協定や条約を結ぶ間もなく4年後、再び大戦勃発。第三次忍界大戦が始まる。そして今に至るってわけだ。

「これ……つまり今まで碌に平和条約結んだことないってことかぁ」

 改めて整理するとそういうことだ。
 今まで三回の大戦があった、って言っても、大戦がなかった間に平和だったわけじゃない。ただ休戦してただけだから、国家間の交流や自由貿易もかなり制限されており、国境では小さな諍いが絶えなかったようだ。
 しかし、恩師の死と長く続いた二回の大戦を経験したヒルゼンは、今、木の葉の優位や有利をたてに条件をつきつけることなく、譲歩して、様々な国と和解の条約や友好条約を結ぼうとしている。国が興ってから50年間続いた戦いの歴史が、ついに終わりを遂げようとしているのだ。安寧秩序を望む民衆の風潮が、新聞の社説や木の葉が毎年発行している報告書からも感じられる。
 わたしは適当にノートを纏めて、書庫を出た。
 とりあえず大まかな歴史の流れは理解できたし、原作で語られなかったことも補完できた。ひとまず二番目の目的はクリアだ。


 さて、木の葉の辿った歴史やうちは一族の置かれた状況から整理すると、九尾事件(第三次忍界大戦終了)まではこうだった。

■里の意向と行動
・折角戦国時代が終わり、一国一里システムを盤石にしたいときにうちはマダラが里を襲った。
・うちはは一族内の結束が強く、愛の喪失により人が変わってしまう致命的な欠陥がある
 →うちは一族を里の中枢に関わらせるのは危険、警務部隊の名目で一括管理したい

■うちは側の意向と行動
・うちは一族を郊外に追いやり、政治に関わらせようとしない里上層部の方針は差別だ
・しかしマダラのように里に仇なすわけにはいかない、戦争も起きている
 →今は里の中で不満を言ってる場合じゃない

 それが、戦争が終わり、九尾事件が起こったら、

■里側の意向と行動
・九尾を操ることができるのは木遁と写輪眼だけ、しかし木遁使いは今いない
・犯人は昔のうちはマダラを同じことをしている
 →うちは一族が今までの不満をぶつけるためにやったこと?

■うちは側の意向と行動
・九尾事件で警務部隊は前線に出してもらえなかった
・九尾を写輪眼でコントロールできるのに、逆に操ったとそしられた
 →今こそ一族が虐げられてきた歴史を木の葉の民衆にしらしめ、上層部に今までの忍耐を思い知らせたい。

 そして、それを受けた里は、

■里側の意向と行動
・長く続いた戦争がやっと終わって平和への土台ができるときに、一族のことだけしか考えていないのはどういうことか
・平和条約締結前後が要なのに、そこでクーデターなど起こされたら折角の安寧が脅かされる
 →何があってもクーデターなど起こさせるわけにはいかない。

 と、こうなったわけだ。
 つまり、九尾事件が起きなくても、いずれ何らかのきっかけでうちははクーデターを起こそうとしただろう。それがたまたま今の時代、今の時期だったというだけで、延期こそすれど完全な回避はあり得ない。
 うちははそういう一族だからだ。
 わたしはまとめた文字をしばし眺めて、んーと唸った。
 この九尾事件、うちは一族の使いようによっては、今までの不満を解消させてやることもできたはずだ。九尾の前にうちはを配置して、仮に九尾をコントロールできなかったとしても命を賭けて壁になってくれるし、もし九尾を抑制できたなら、一躍里を救った英雄となる。民衆にも感謝されて上層部への発言権も強くなり、結果的にうちは内部の不満も小さくなったはず。
 それをせずに、敢えてクーデターを企てるほうに煽ったのが、ダンゾウだった。

 なんでダンゾウって……そうなんだろう。
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