6歳 / 姉がうちはに嫁ぐらしいA
副題:原作破壊はしないといったな?あれは嘘だ

「というわけで、第1回!”あの夜”を回避しよう作戦会議を始めます!」
「わぁい!」
「司会進行はわたくし東雲サエ、議長はわたくし、書記担当わたくし、副議長はコゼツです!よろしくお願いしまぁす!!!」
「ヤッター!ボク副議長!!」
「そこよりもわたしの兼任が多すぎることにつっこもう」

 今わたしとコゼツは地下室にいる。2人で作ったあの地下室だ。
 部屋の天井には元々電気を引いてランプを下げているが、それだけだと使い勝手が悪かったので、コゼツが父の手伝いの傍ら作った小さいローテーブルを置いた。そこにノートを広げて向かい合わせになって座るのがこの作戦会議の定位置だ。
 わたしはコゼツに来るべき”あの夜”と姉が辿る運命についてざっくりとした説明をした。まだコゼツがマダラや黒ゼツの手先として動いている疑いを持っているので、この話をしてしまうのは危険だったが、どちらにしろやらなきゃ姉は助けられない。そして助けるために、コゼツの存在は必要不可欠だった。

「まずわたしは考え得る限りの姉を救う方法を箇条書きにしてみました」
「いつやったのこれ」
「授業中」

 座学の教科書は全部読み終わったから授業を受ける必要がないのだ。

@姉にうちはヤクミに嫁ぐことを辞めさせる。
→△:姉がヤクミさんのことが好きすぎて説得できるとは思えない。
 --1、ヤクミさんを婿入りさせる。
 --2、ヤクミさんを殺す。

「この△ってのは成功する確率?--1とか--2はどういう意味?」
「そうそう。--1とか2は、@を正攻法でやり遂げることができない場合の代替案というか、うーん、@と同じ目的ではあるけどわたしたちに影響の高い方法っていうか…」
「ハイリスクな方法ってことでしょ?ヤクミってのを殺した場合、犯人がボクらだと知れる可能性が高いしそもそもうちは一族をそう簡単に殺せない。その上ボクらがお姉さんに恨まれる、と……」
「それです」

A姉だけ助けてくれるよう里またはイタチに頼む。
→×:わたしのことが疑われ、最悪記憶を覗かれるので危険性大。一番ダメな方法。
 --1、姉を殺したらサスケを殺すとイタチを脅す。
 --2、ヒルゼンの甘さに期待してお願いする。

Bあの夜前夜に姉だけ攫って匿う。
→△:警戒心の高まっている時期に、うちは地区にいる人間を簡単に攫うことができない。
 --1、避雷針の術を習得し、姉を瞬時に別のところへ飛ばす。
 --2、コゼツの別個体で姉のチャクラを持った身代わりを用意する。

「お姉ちゃんだけ助ける方法で思いついたのはこの三つかな…。”あの夜”は再現するけどその場からお姉ちゃんだけ引くっていう」
「今のボクらの力じゃ、その夜を回避するのは難しいから無難だね」
「うむ」

 おっと早速この会議の名前に違える発言をしてしまった。

「で、次からのがあの夜を回避する作戦」

Cあの夜直前にイタチを殺す
→×:技術的に無理だし、第二のイタチが用意される恐れあり。
 --1、今のイタチを殺す

Dクーデターを起こさせて内戦勃発させる
→△:うちは一族にイタチが二重スパイだとバラすなり、ダンゾウの思惑をバラすなりして彼らを煽るのはいいが、ダンゾウがどんな強硬手段に出るか分からない。
 --1、うちは一族を穏健派とタカ派にはっきり分裂させ内輪もめ→クーデター。
 --2、火の国と敵対関係にある里に木の葉の内情を漏らし外圧を強め、里側を手薄にする。

E仲間を増やしてうちはと里の緩衝材になってもらう。
→△:それは既にイタチやシスイがやった手だから、結局は同じことだし、オビトに感づかれたら死亡案件。
 --1、ヒルゼンに全てを話してダンゾウを止めてもらう。
 --2、イタチとシスイに全てを話して両者を止めてもらう。

 わたしにはナルトのような会話で相手を動かすカリスマ性がない。そもそもナルトには、主人公補正というカリスマ性だけではなく、彼が今まで歩んできた物語という名の経験があって、また迫害され疎外感を感じながら育ちつつもヒルゼンの愛によって幼少期を過ごしてきたという過去があってこそ、様々な敵の心を乱してきたのだ。言葉や力でもって誰かを”説得”することにおいては期待しない方がいいだろう。

「めぼしいのがないね」

はっきり言うなはっきり。

「強いて言えば、@-2かC-1かな!」
「死体が出る案ばっかり推さないでくれるかな??」
「あとはBと、三代目火影に頼る案」
「うーんそれね……」

 三代目火影ね…。わたしは唸った。
 三代目火影猿飛ヒルゼンは強いし、優しいし、本当に良い火影だと思ってる。それは、小さいころから大人や子どもに迫害されながら育ったはずのナルトが、あんなに擦れずに成長したことが物語っている。生みの親より育ちの親と言うけれど、ミナトさんクシナさんがいなくなったのに、ちゃんと生みの親譲りの意思の強さと明るさ、ポジティブさを持って成長したのは凄いことだ。
 しかし、ヒルゼンは優しくもあり甘くもある人だ。そういう設定。それを、ダンゾウも知っていて、勿論ヒルゼン自身も知っているからこそダンゾウの存在を許している。むしろダンゾウの必要性を最も知っている人なのかもしれない。”あなたに弟子が殺せますか?”と言った大蛇丸もそれを知っていて、事実里抜けする弟子を一度見逃した。
 自分の甘さを熟知している人が、わたしみたいな”原作知識持ってます☆ダンゾウがうちは一族絶滅させるんで協力してください☆”とかいうキチガイの存在をダンゾウに喋らない筈がない。ヒルゼンが喋る気がなくても、甘いと言われるだけあってしっかりダンゾウが聞きつけるだろう。あの二人はそうやって、今まで表と裏で木の葉を支えてきたのだから――。

「悩ましいな。正直ね、わたしはコゼツ以外に自分のことを言うつもりないんだよ」
「ボクにもちゃんと話してもらった記憶ないけどね」
「うっ」
「まあそれはいいとして、今日はまだ作戦会議一回目だし、追々思いついたら付け足していけばいいんじゃない?これは所謂具体案でしょ」
「うん、わたしもそのつもり。まずは選択肢を広げるためにも、わたしが強くならなきゃいけない」

 強くならなきゃいけない。作戦も重要だがわたし個人の強さも等しく重要だ。強くならなければ……これから戦う人たちは、数々の修羅場を乗り越えた百戦錬磨の忍たちなのだから。
 わたしは焦っていた。その後もコゼツと話し合い、今すぐ着手できてルーティーンワークとも兼ね合いが取れて、今すぐやるべき課題を三つ決めた。

1、己を知る。
2、敵を知る。
3、身体をつくる。

「単純明快!シンプルでいい。今からこれを三本柱としよう」
「やる気満々だね」

 ノートに書かれた大文字を見て、コゼツがわたしに笑いかけてきたのでわたしもつられて笑った。自分の前に立ちはだかる障壁が大きすぎて、その打開策のとっかかりはまだ見えない。そんな時に笑う気持ちにはなれなかったけれど、コゼツの無邪気な表情が心を緩ませる。
 コゼツがいてよかった。
 この子の存在に救われたと、わたしは心底思った。
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