6歳 / 忍術アカデミー
副題:動くな!そいつはラスボス(の片割れ)だ!

 気を取り直して春を迎えたわたしは、やっとアカデミーに入学できた。入学式にはうちはイタチ、その父フガク、犬塚ハナ(キバの姉かな?)、その父(名前はわからない)、そして壇上には火影のヒルゼンといったそうそうたる面々が並んでおり、にわかに浮足立った4月5日である。
 入学できないかもしれない、とそわそわしていたコゼツだが、無事その許可が下りて喜んでいた。入学試験は簡単な面接だけで何を調べられたのかよく分からないが、本気で不安がっていたコゼツが見られたのでよしとする。コゼツって不安だったり心配だったりすると、真顔になるんだよね。可愛い。
 また、入学と同時に二人で一つの部屋をプレゼントされた。

「男の子と同じ部屋っていうのはちょっとデリカシーがないから、真ん中を簾で区切ってあるの。仲良しのあんたたちは、これくらいでちょうどいいでしょ」
「お前たちが森に遊びに行っている間に、お父さんが毎日コッソリ増築してたんだ。家の修理も兼ねてな。気づかなかったのか?」

 嬉しすぎるプレゼントだった。わたしは普段なるべく年相応に見えるように気を付けていて、悪く言えば演技しているので、喜びや感謝も自然に出てくるというよりは頑張って”表現している”といった感じなのだが、このときばかりは本物の歓びが沸き上がった。物凄く嬉しかった。親にもその雰囲気が伝わったのだろう、少しほっとしているようだった。ごめんね。
 ただ姉は、忍になると聞いてからその話題を出すと眉毛を下げるようになった。本人は笑っているつもりなんだろうが、小さい時からその癖を見ているからバレバレだよ。

「お姉ちゃん、心配してるの?」
「だって……、忍は危険なお仕事なのよ。まだ小さいのに、お姉ちゃん心配で」

 わたしの前に膝をついて、目線を合わせて頬をむにむにと引っ張る姉は、両頬をプクーッと膨らませている。姉のそういう優しさが本当に好きだ。元々姉はあざといポーズをするタイプじゃないけれど、小さいわたしにも分かるように、敢えて気分を表情で表現しているんだろう。わかる?この優しさ。お姉ちゃん心配してるんだよモードだってわたしに訴えてきてるんだよ??

「うっ………尊い…」

 思わず顔を覆って震えながら呟いてしまった。

「絶対死なないでしょコイツ」

 コゼツは鼻で笑っていた。


――えー、そうして始まったわたくしさんのアカデミー生活ですが、一か月が過ぎてどうですか?楽しいですか?
『楽しいか楽しくないかで言えば楽しいですね。自分本当ならアラサーなんですけど友達らしきものもできました』
――わあ、それは良かったですね!お友達とはどんなことをしますか?
『お喋りとか恋バナとか秘伝忍術自慢を眺めたりとかです』
――うんうん、そうですか!お遊びでは、特に何をするのが好きですか?
『図書館にいるのが好きです。本をかなりの勢いで読破していってます』
――凄い!じゃあ授業の方はどうでしょうか、難しい?何か感想はありますか?
『そうですねぇ、感想というか、思い知ったことが三つありますね!』

 一つ、座学は問題ない。
 一つ、体術と幻術がゴミ。
 一つ、コゼツはガイになるしかない。


「はははっ!コイツ全然チャクラ練れてねーぞ!」

 今日も今日とてコゼツが男子に虐められている。
 忍術の授業で、コゼツがちっとも、微塵も、1ミクロンも、チャクラを溜めることができないことで担任の先生に困った顔をされるのが最早習慣った昼休み。わたしと一緒にお弁当を食べているコゼツに向けて鉛筆が投げられた。ヒョイ、とそれを避けて、にやにやした顔で振り向くコゼツ。

「でもボクの方が君より強いよ」
「はぁ?なんか言ってやがるぜコイツ。オイ!気持ち悪ぃんだよ!」
「ほんときめーよお前、チャクラも練れねー雑魚の癖に!大体俺たちより強いわけねーじゃんバカじゃねーの?」

 おいおいおいおいおい!おい!!
 お前らなあ、お前らは知らないだろうけどなあ、コイツはラスボスの片割れなんだぞ?!本当ならめちゃくちゃ危ない存在なんだぞ?!あの暁の黒幕のうちはオビトと繋がってて、その黒幕の黒幕のマダラの指示で動いてて、その黒幕の黒幕の黒幕の黒ゼツの半身が白ゼツで、そこから生まれた別個体がコイツなんだぞ?!?!
 昨日の晩御飯の残りの煮物、味が染みてて美味しいなあ、なんつって人参を噛みしめながら平和な昼休みを過ごしたいわたしの希望を真っ向からへし折るようにしてお子様たちが騒いでいる。黄金色の瞳をスゥと細めて、久々に好戦的な表情を浮かべるコゼツを眺めてわたしは深いため息をついた。

「恐ろしいことを……これだから何もしらない子どもは…コゼツ、気を付けてよ」
「分かってるって」
「違うよ子供は煽り耐性低いってことだよ」
「アッハー分かってるって〜ボクこれでも結構身軽なんだ」

 コゼツは弁当をガーッと勢いよく飲み込むと、胸を張って待ち構えているお子様たちに向かって意気揚々と席を立つ。

「遊んであげるよ、砂利ども」

 マダラの口調うつってるぅぅぅ!



「さて……」

 コゼツがガイ先生ルートを辿る運命にあるのは可哀相だが、他人のことばかりも言っていられない。
 アカデミーの科目は戦闘手段科目として手裏剣術、体術、忍術、幻術、また教養科目として忍教養基礎、歴史、そして女子専用科目として料理、華道、作法がある。その中の、主に体術と幻術がわたしはからきしダメだった。
 あと、ずっと気になっていた房術はまだ出てきていない。教科書にはそれらしきページがあるので、もしかして相手をベッドに誘うやり方とかセックスの仕方とかも教わるんだろうか……ヒエ〜〜多分というかほぼ確実にわたしだけ処女じゃない〜〜〜身体は処女だけど心に処女膜がない〜〜〜〜。

「自主練ってどうやればいいんだろう」

 とりあえずアカデミーの敷地内は授業で使うので、授業時間以外でなら使用OK。また、第1から第15演習場まであり、そのうちのいくつかは使用許可が必要だったり上忍のみ使用可能だったりするが、第1演習場と第2演習場は誰でも好きな時に使用できることが分かった。

「とりあえず朝練と昼練はアカデミーの敷地内で、夜練は……夜演習場にいるのはやだなあ。なんか見てはいけないものを見てしまいそう」

 根による暗殺とか、暗部による暗殺とか、暗殺とか暗殺とか。
 弁当を食べ終わった後手裏剣場に行くと、イタチが早速カッカッカッカッと全ての的のど真ん中に手裏剣を命中させていた。お前わたしと一緒に入学したろ、なんでもう直線投擲はマスターしてんだよ。まああなたが4歳のときから自主練してるのは知ってるけどさ…。

「………。」

 彼はチラリとわたしをみて、すぐ興味を失い自分の練習を再開する。まあ近くにいると流れ弾が当たりそう(相手に)で心配だけど、この人なら大丈夫でしょう。
 こうして、わたしの毎日は忍としての訓練にがっつり費やされるのだった……さらば、懐かしの引きこもり生活。
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