37.5

◎本編37話(GW合宿音駒練習試合)後の話
◎研磨くんと黒尾くんの会話がメイン

◇◇◇


「いや〜、烏野、思ったよりレベル高かったな」
「うん、面白いね」
「色んな意味で、な」

ゲームのレベル上げをしながら適当に相槌を打っていたら、クロが明かににやりと笑うからちょっとだけびっくりした。色んな意味っていうのはきっと、女子マネージャーのことだろう。虎は女子マネがいるとテンションが上がるとか言ってたけど、クロまでそういうこと言うのはちょっと意外だった。

烏野には女子マネが二人もいた。
一人は三年生でちょっと綺麗めタイプの人。もう一人の子は、確か俺と同い年って翔陽が言っていた。

「羨ましいなあ、女子マネ」
「まあ、見てて飽き無さそうだよね」
「?」

クロが羨ましいと言っているのはどちらかといえば3年生の方。綺麗めが好きなクロにとっては羨ましいの対象な気がする。俺が思い浮かべていたのは、どちらかというと2年の方だった。

試合中も烏野の攻撃が決まると表情を輝かせて、逆にウチが粘ってボールを拾うと苦い顔をする。一球一球のサーブでは目を輝かせていた。その中でも一段と表情が明るくなるのが、たまに出てくる2番の人がコートに入ってきた時。俺と同じくセッターみたいで、でも烏野には翔陽と変な攻撃をしてくるあの天才セッターがいた。今回の練習試合では練習試合だからこそ色々メンバー変えてやってたみたいだけど。

それでもあの人が、2番の人がコートに入ったときに、あの子は子供みたいに目をキラキラさせてた。

「クロは3年の人がタイプでしょ」
「おっ、研磨が食いついてくるなんて珍し。まあ確かにあの子可愛いけどガード固そうだし、2年の子も可愛いと思う。クッソ、マジでレベル高くて羨ましいな」

デレデレと表情を緩めるクロを見てわざと眉を顰めながら、残念ながら本気になっても叶わないよ、と思う。

「あの子は辞めた方いいよ」
「え、なんで」
「絶対無理だから」

クロだから無理、なんじゃなくて、多分あの人以外無理。
2番さんがどう思ってるかとかは試合中だけじゃわかんなかったけど、あの子はきっと他の奴なんて眼中にないタイプなのかなって思った。でももしかしたら付き合ってるのかもしれないし。

「へぇ、研磨がそこまで言うなんて。もしかして好きになった?」
「なんでそうなるの。クロじゃ無理だよってこと。俺でも無理、リエーフでも夜久くんでも翔陽でも無理」
「…ふーん?」

クロは煮え切らない返事を浮かばせたけど、その後は追求してこなかった。なんとなく理解したのか、理解できなかったけどそこまで興味もなかったかのどちらかだろう。

あの子は、翔陽と同じく面白いと思った。解ろうとしなくても感情が目に見えてわかって、向いてる矢印までダダ漏れで。どうしてそれで烏野の人たちは普通なんだろう?とちょっと疑問だったりするけど、そこまで追求する権利には俺にはないんだろう。

これから先きっと関わることが増えていく相手だし、見ていて面白いから気になっている、それだけ。

『紬さんのこと気になるなら声かけてみたら?』
『いや、俺そういうのはいいから。面白いだけ』
『ふーん?でも紬さん優しいしいい人だし、話してみるといいよ』

翔陽はそう言ってたけど、俺はしばらく見る専でいいかな。
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