「いただきます!」
「どうぞ。あんま材料なかったから全然たいしたもんじゃないんですけど」
「いやいや!俺なんか一人暮らし8年してるのに未だに味噌汁作れないし!」
「威張るな」
「でも父さんも威張れないよね」
「うっ…」
たいしたものじゃない、と言いながらも主婦顔負けなチャーハンを出す智希。
確かに具はあまり入っていないが、米と卵の絡み具合、味付け、絶品だ。
そんな智希にサラリと言われ肩を落とす有志だが、負けじと攻撃に出る。
「やろうと思ってもできないんだ。ほんと料理は相性が悪い」
「そうだね。昔インスタントラーメン作ろうとしてボヤ騒ぎ起きたもんね」
「えぇインスタントは料理に入らないっすよ!」
「そうそう。父さんは火を使うセンスが全くないってことで、その日以来台所に立つこと禁止してんの」
「あっはははは」
情けない。
だが本当のことだ。
やっぱりこいつには勝てない。
俺お父さんなのに。
重里のいるおかげで会話は弾み、さほど中のことは気にせず昼食を食べ終えれた。
皿を全て片付けると、すぐ冷蔵庫から重里の持ってきたケーキを取り出しテーブルの上に並べる。
「わーうまそうー」
「泉水さん甘いの好きですよね?」
「す、好きってほどじゃないけど…嫌いじゃない」
クスっと笑う智希。
わかっているからだろう。
本当は有志は甘い物が好物なのだ。
しかし部下に甘いもの好きと思われるのがなんとも恥ずかしく思わず嘘をついてしまった。
智希には全てお見通しなわけで。
綺麗に一つ一つ包装されたショートケーキ、チーズケーキ、チョコケーキをそれぞれ取り出し、皿に移していく。
ちなみにショートケーキが重里、チーズケーキが智希、チョコケーキが有志だ。
「おおうまい」
「でしょ、俺んちの近くにあるケーキ屋さんなんですけど、小さいのにいつも列ができるぐらい繁盛してるんですよ」
「いいな。俺ちょっとお菓子職人にも憧れたんだよな」
「へぇ」
「でも智希君なら器用だからなんでも出来そうだよね」
なんでも話してくれていると思っていたため、お菓子職人になりたいと思っていたことを知り少しショックだった。
やっぱ俺頼りないから将来の相談とか全然されないもんな。