「でもなんでお菓子職人に?そんな甘いもの好きじゃないんでしょ?」
「あ、はい。でも父さんが甘いもの好きだから」
「もしかしてお父さんに甘いものいっぱい食べさせてあげたいからとか?」
「はい」
しれっと答える智希。
体が熱くなり始める有志。
「凄い単純だねぇ」
「おれ、単純っすよ」
ケラケラ笑う重里をよそに、有志と智希は目が合った。
フォークを口に咥えニィっと笑う智希。
有志は胸が苦しくなりすぐ目をそらした。
だめだ。
めちゃめちゃうれしい
ドクンっ。
奥が、疼く。
俺の体が、智希に抱かれることを望んでる。
さっきまで穏やかだった中がまだ疼き始めた。
キュっと下唇を噛む。
「あれ、でもさっき泉水さん、それほど甘いもの好きじゃないって」
「っ好き」
「え?」
「凄く…好きなんだ…本当は…」
「やっぱ親子ですねぇ。なんでもわかってるんですねぇ」
ざわつく奥を感じながら智希を見ると、テーブルに肘をついて穏やかに笑い有志を見つめていた。
「じゃ、お邪魔しました〜」
「またいつでも遊びに来いよ」
智希が黙り込む。
後ろから冷気が。
「そうですね。次も酔った泉水さんを運びに来るんじゃなくて、普通に遊びに来たいですね〜」
「その、えっと。その節は、本当に、すまなかった」
「いいですって。その代わりいつも仕事でお世話になってますから」
「お前はもうちょっと落ち着いたらましになるんだけどな」
「はぁい」
「ケーキ、ありがとうございました。おいしかったです」
「いえいえこちらこそチャーハンうまかったよ」
「ありがとうございます」