首元が少し開いたシャツに薄手のジーンズ。
重里にむける笑顔の智希。
見ているだけで体の奥が疼き刺激を求めている。
「あれ、泉水さんめっちゃ汗かいてないですか?」
「そ?さっきまで洗濯物干してたからかな」
「そうなんだ。あ、これよかったらどうぞー」
「あ、すみません」
「いえいえ」
「じゃあこれ冷蔵庫に入れてきますね。昼飯の後に一緒に食べましょう」
重里が差し出したケーキの箱を智希が受け取ると、ニコリと笑って台所へ消えていく。
その、今まで何もなかったかのようにできる姿は見ていて尊敬する。
と、有志は心の中で思った。
しかもちゃんとローションとか全部片付けてるし。
「どこ座ったらいいですか?」
「どこでもいいよ。こっち…ソファ座る?」
「あ、地べたでいいっす」
「いいよ、客なんだから」
「あ、すみません」
有志は重い腰を持ち上げ立ち上がろうとした、その時。
「あっっっ!」
「へっ?!」
なっ中でゴムが動くっ…!
5つのスーパーボールがランダムに動き有志の中で暴れている。
思わず声が出てしまい必死に手で口を隠したが重里はその声をはっきり聞いてしまった。
やばっ…!
「父さん虫でも踏んだ?」
「ええ虫ーっ!わっわっまじですか?!」
「あ、うん。でもどうかな。見間違いかも」
どうやら重里は虫が苦手なようだ。
さっと有志から離れ顔を強張らせている。
なんとか誤魔化せたようだ。
ほっと溜息をつき智希を見ると、ニコっと笑っていた。
くそぅ…。
悔しい。
絶対ボロださずに過ごしてやる!
有志の戦いが始まった。
とりあえず意識しなかったらいいんだ。
重里と話しをしていたらきっと大丈夫だ。