ガチャっと、トイレの扉が開く音がした。
同時にまた、智希のため息が聞こえる。
「春日部葉子さんと関係ない子供だったらどうすんの」
「それは…ないかな」
「なんで?」
「目元が…凄く葉子さんに似てる」
再び姿を現しリビングに戻ってきた子供に、智希は嫉妬を覚え思わず睨んでしまった。
将太は智希の視線に気づかなかったようで、パタパタと走りながら有志に近寄り、抱きつく。
チッ。
心で舌打ちをしてしまう高校生。
相手は小学生だと自分を無理やり静める。
「パパ。ぼくお腹空いた」
「あーそうだな…そういやご飯食べてなかったなー……智、この子の分も晩御飯ある?なかったら俺の上げて…」
「この子じゃないよ。将太だよ」
「ん、そっか。ごめんな将太。でもその…まだパパか決まったわけじゃ…」
「なんで?パパはパパだよ。昔からママにこの人がパパだよって写真見せてもらってた」
「その写真、ある?」
「あるよー」
将太はソファの上に置いていたリュックを取りに行き、ガサゴソと中を探り一冊の大学ノートを取り出してきた。
「はい」
「ありがとう」
大学ノートから出てきたのは、一枚の写真。
少し古びた写真の中央に写っていたのは、花見をしている男女二人だった。
「っ………」
智希は有志の肩口からその写真を見ると、なんとも言えない感情がこみ上げてきた。
優しそうに笑う綺麗な女性と、その女性の隣で同じぐらい優しそうに笑う有志がいた。
「智?」
「………」
「…顔色悪いぞ?」
「えっ…あっ…」
俺以外に?
俺以外に?
俺以外に無条件で父さんに愛してもらえる存在がこの世にいるのか?
そんなの
父さんと繋がってていいのは