glow
05
「ガラス…危ないから」

「あ、ごめん智希」

ちょっと、情けない。

「と、とりあえず今日はもう遅いからおうちに帰ろうか」

「やだ」

「もう遅いし、帰ろう?ね?」

「やだ」

有志が優しく微笑みかけても首を縦に振らない。

あんなに笑顔だったのに、急に不機嫌な顔となりひたすら首を横に振る。

「お母さん、心配してるよ」

「ママ、どっか行っちゃった」

「えっ」

夕食前。
二人ともお腹を空かせていたというのに、この時空腹感は全くなかった。

ただ驚きと不安でこの少年の発言に振り回されていた。



「どうすんの」

「うーん」

将太がトイレに入った隙に、智希はすかさず有志に話しかけた。
二人は立ちながらはぁ、とため息をつき視線を落としながら腕を組む。

その格好がまた似ていて、親子なんだなと周りが見ると感じるだろう。

「ってか、パパってなに」

「………」

「春日部葉子って誰?知ってんの?」

「………」


苛立ちもあってか、智希は早口で捲くし立てた。
視線を落として喋らない有志。
さらに智希の苛立ちも増えるわけで。

「まじ、誰なんだって」

「昔、母さんが死んで……お前に母親をって思ってたときに付き合ってた…女性」

「前言ってた…?俺が母親いらないって言ったから別れたっていう?」

「うん…智希が7歳ぐらいの時だから…」
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