「僕、何歳?」
「……9歳」
「9歳かぁ。お名前は?」
「春日部将太」
「将太くんは、どうしてここに来たの?」
子供相手にうまいなーと、有志をまじまじ見てしまう。
有志と智希に挟まれ空になったコップを膝の上に置いて一息ついた将太は、有志から視線を外し小さく深呼吸した。
「パパに会いに」
「パパって?」
「……パパ」
右手ですっと有志を指差す。
ゴクン、と生唾を飲む有志と智希。
「お母さんのお名前は?」
「春日部葉子」
「………」
「父さん?」
一瞬悩んだ有志は、すぐハっと顔色を変え将太に体を向ける。
将太の二の腕を掴んでじっと見つめると、大きな目がじっと有志を見つめた。
「葉子って……まさか」
「父さん…もしかして思い当たんの?」
「あっ」
我に返った有志は智希の存在に気づき喉を鳴らした。
将太は有志と智希を交互に見上げ、渡すタイミングを失ったコップが寂しく膝の上で震えている。
もしかして、君は。
あの人の?
有志は再び将太に目を向けると、じっと確かめるようにその顔を見つめた。
「まさか…本当に…」
「パパー」
「あ、ちょっ!」
眉間にシワを寄せる有志に、将太はコップを持ったまま抱きついた。
将太が有志に抱きつき、ほぼ反射的に智希が声を上げ立ち上がり二人を見下ろす。
なんだよ。
そう思いながら智希は将太を見下ろしたというのに、逆に なんだよ。 と見上げられた。
思わずたじろぐ。
ぐっと足を踏みしめ将太の持っていたコップを取り上げる。