「腹減った」
「ちゃんと作ってるよ」
「ってか動けない」
「オッケ、持ってくるよ」
ベッドに寝転びずっと有志の頭を撫でていた智希は、枕に顔を埋める有志のこめかみにキスを落とし部屋を出て行った。
バタンとドアが閉まる音が聞こえると、もそりと顔を上げ上体を起こす。
「つっーててっ…」
腰を押さえ顔を歪める。
慣れてしまったせいか、痛みは全くない。
フルマラソンをしたような疲労感と、ツったような感覚の腰。
そりゃ何時間もあんな格好してたらな。
はぁ、と大きくため息をつきベッドについた肘に力を込めて起き上がる。
ベッドの端に座り体にまとわりついたたくさんの液を見てまた、ため息が出る。
「こんな性欲強い方じゃなかったんだけどな…」
ポソリと呟くと階段を上がる音が聞こえた。
智希だ。
音を立てながら扉を開け、良い匂いと共に部屋の電気に明かりが点った。
「起きてて大丈夫なの?」
「辛いよ」
「……ごめん。はい、ご飯」
やりすぎてごめん、か…。
トレーごと渡し有志のすぐ隣に座る。
有志は温かい湯気の匂いに腹をグゥと響かせ箸をとった。
今日はおでんだ。
「最近寒くなったよなー。父さん寒がりだし、暖かいもの食べて体冷やさないようにな」
相変わらずどっちが父親なんだか。
ちょっと、凹む。
10月も過ぎれば肌寒くて、今週末は衣替えをしようと思っていたのに。
こんな腰じゃろくに動けないだろうなぁ…。
よく煮込まれた大根をホクホクしながら頬張り、ぼんやり視線を泳がせていた。
だがしかし、週末の「コレ」は有志が勝ち取った智希最大の譲歩なのだ。
週5。
40近くの大人と、やりたい盛りの17歳が夜の生活でお互い満足いくわけがない。
有志には仕事がある。
遅い時は日付けが変わる時だって稀にある。
いつも通りに仕事が終われば19時過ぎには帰れるのだが、有り余っている高校生の性欲に対応できるわけがない。
しかも男同士だ。
負担は大きい。
そこで有志が出した提案は土曜日の夜、のみ。
もちろん、智希が納得するわけがない。
何時間も話し合い、出た答えが。