Trust
03



「腹減った」

「ちゃんと作ってるよ」

「ってか動けない」

「オッケ、持ってくるよ」

ベッドに寝転びずっと有志の頭を撫でていた智希は、枕に顔を埋める有志のこめかみにキスを落とし部屋を出て行った。

バタンとドアが閉まる音が聞こえると、もそりと顔を上げ上体を起こす。

「つっーててっ…」

腰を押さえ顔を歪める。

慣れてしまったせいか、痛みは全くない。
フルマラソンをしたような疲労感と、ツったような感覚の腰。

そりゃ何時間もあんな格好してたらな。

はぁ、と大きくため息をつきベッドについた肘に力を込めて起き上がる。
ベッドの端に座り体にまとわりついたたくさんの液を見てまた、ため息が出る。

「こんな性欲強い方じゃなかったんだけどな…」

ポソリと呟くと階段を上がる音が聞こえた。

智希だ。

音を立てながら扉を開け、良い匂いと共に部屋の電気に明かりが点った。

「起きてて大丈夫なの?」

「辛いよ」

「……ごめん。はい、ご飯」

やりすぎてごめん、か…。

トレーごと渡し有志のすぐ隣に座る。
有志は温かい湯気の匂いに腹をグゥと響かせ箸をとった。

今日はおでんだ。

「最近寒くなったよなー。父さん寒がりだし、暖かいもの食べて体冷やさないようにな」

相変わらずどっちが父親なんだか。
ちょっと、凹む。

10月も過ぎれば肌寒くて、今週末は衣替えをしようと思っていたのに。

こんな腰じゃろくに動けないだろうなぁ…。

よく煮込まれた大根をホクホクしながら頬張り、ぼんやり視線を泳がせていた。


だがしかし、週末の「コレ」は有志が勝ち取った智希最大の譲歩なのだ。


週5。
40近くの大人と、やりたい盛りの17歳が夜の生活でお互い満足いくわけがない。

有志には仕事がある。
遅い時は日付けが変わる時だって稀にある。

いつも通りに仕事が終われば19時過ぎには帰れるのだが、有り余っている高校生の性欲に対応できるわけがない。

しかも男同士だ。
負担は大きい。

そこで有志が出した提案は土曜日の夜、のみ。

もちろん、智希が納得するわけがない。
何時間も話し合い、出た答えが。
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