'cause i love you
07

「えっ?!と、東條さん?!!」

「お?智希くんじゃんーどうしたの?ケガ?」

サッカーの授業でボールと共に舞い上がった砂の中に大きめの石があったらしく、右のこめかみあたりを切ってしまった。
痛みはないものの血が出た為(あと、智希が有名選手ということもあって)クラス全員が慌てて保健室へ行くよう促したのだが、本人は全く痛くないので拒否すると体育教師に泣かれた。

「お前になんかあったら俺まじクビだから!!」

授業も終わる寸前だったのでHR終わり次第行きますと伝えると、担任に伝わっていたのかHRは数秒で終わり無理やり教室を追い出された。

最近みんな俺に関して過保護すぎる。

過剰すぎる期待は苦手なためどうしたもんかと再び大きな溜め息をつきながら保健室を除くと、見知った顔に一瞬息をのんだ。

「君、かなり有名選手だったんだね。ダメだよ、あんな簡単に不良の喧嘩買っちゃ」

丸イスをくるりと回しドアの前で立ちすくむ智希を見つめる少しちゃらい保健医。
確か先月まで年配の女性だった。

「な、なんで東條さんがここに?なんで保健の先生の格好してるの???」

東條とは、先々月の北海道旅行で出会った恩人であった。

その恩人が、北海道に住んでいた恩人が、なぜかここにいる。

なぜか智希の高校で、白衣を着てディスクに向かっている。

「いやー生まれて初めてね、親のコネ使って就職しちゃった」

「親のコネ?」

「そ。紹介文っての。でもほんと運よくってさー。賄賂とかはしてないよ?まさか君の通う高校で働けると思わなかったし、運良く保健の先生が定年ってのも知らなかったし」

東條は相変わらずよく喋るけれどそれは鬱陶しくない量とスピードだ。
数年医者として働いていた経験がそうさせているのだろうか、会話のテンポが運びやすい。

「で、でもなんでその、親のコネ使ってまでここに?」

「んー、まぁ、ちょっと気になってね」

「?」

「君ら親子の事」

「俺らのこと、ばらすためにきたのか」

ドスのきいた低い智希の声が保健室に響く。
東條はしまったという顔をして頭をぽりぽりとかくと、両手を前に合わせ謝った。

「ごめんごめん誤解だ。それは違う。そんなことは絶対しない」

まだ、信じていないという顔。

「まぁ君らのことはね、良い事をしているとは思ってないよ。世間体、両親、母親、友達……。誰にも言えない爆弾を抱えていることになる」

「…………」

「でもね、君たちのソレは、凄く純粋で、単純なことだと思ってるよ。だからバカにしないし、もちろん、卑下したりもしない。力になれるならなるし」

「じゃあ…なにしに」

「んー。力になれるなら、っていったけど、ちょっと嘘だわ。俺ね、有志さんのこと気に入ってしまってね」

「??!!」

少し考えたように言ったが、しかしサラっと発せられたその言葉に智希は思わず全身の鳥肌が立ってしまった。
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