冬の深さは
06
暖かい。
手袋よりも、カイロよりも、何よりも暖かい。

あんなに時間をかけてアーチを歩いたとうのにあっという間だった。

あと10キロぐらい歩きたかった、って言ったら体力持たないよ、って言われた。

「この後なんか体力温存しとかなきゃいけないことでもあるの?」

「っ!!」

人が少なくなるころにはもう手が離れていて、一気に冷たくなった手に手袋をはめた。

真っ赤になる父さんを横目にニヤニヤと笑うと、突然早歩きを始める。

「ねぇ、この後なにするの?体力使うことするの?」

「家!!帰らないとダメだろ!帰るのに体力使うだろ!」

「電車乗ってすぐじゃん」

「もうすぐ40だと電車乗るのも体力使うの!」

「毎日仕事で電車使ってんじゃん」

「っっっ」

唸り声を上げてスタスタと前を歩く父さん。
簡単に追いつけるんだけど、わざと追いつかないで後ろを歩く。


家を出る前にこっそりリビングのテーブルに置いてきた父さんへのプレゼント。
最初に家に入ってもらって、見つけてもらいたい。

見つけてもらって、中を見てもらって、喜んでもらって、そのあとは。


ゆっくり歩いて体力温存、しとかないとね。




END
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