「あっはは、父さん目が血走ってる。全然談笑じゃないし」
「こ、こういうの初めてだからよくわからなくて」
「じゃあさ、俺が今まで作った料理で一番うまかったのはなに?」
「全部」
「え、君、料理作るの?」
「あ、はい。母が幼い頃亡くなったので、料理が鬼門の父に代わって毎日作ってます」
「毎日ごはん作ってお父さんの誕生日には喜ばせたいって言ってここに来てくれたの?」
「できた子でしょ!」
「いやいや出来過ぎでしょ!」
さすが、プロ。
あんなに緊張していた父さんの顔がどんどん笑顔になっていく。
笑顔になった理由が俺の自慢っていうのは、嬉しいような恥ずかしいような、だけど。
どうやら絵描きさんは、父さんには俺の自慢話をさせたら笑顔になるとわかったらしく、描きながらずっと俺の質問をしていた。
バスケで頑張っていること、インターハイでいいところまでいったこと、歴代の担任にできた息子さんだと散々褒められてきたこと。
俺は段々恥ずかしくなってきて聞いているようで聞かないようにした。
昔からよく父さんの部下の重里さんとかに、父さんは機嫌がよかったり飲めない酒を間違えて飲んでしまった時は永遠と俺の話を嬉しそうにすると聞いていた。
父さんの血色もよくなってきて、すこし頬が赤いぐらいだ。
可愛いなーブチ犯してぇ
おっと、危ない危ない。
父さんをそういう目で見てしまいそうになった瞬間、絵描きさんが声を上げた。
「はい、できました。うん!我ながら凄くいい出来!」
ほんとに20分もかからないうちに俺と父さんの似顔絵が出来てしまった。
見せてもらったB5サイズほどの画用紙には、目を細くして口を開いて笑う父さんと、はにかんで同じく目を細くする俺が描かれていた。
「流石親子ですね。笑うときの表情がとっても素敵で似てましたよ」
「……ありがとう、ございます」
「?もしかして…気に入りませんでした?」
俺も父さんもその絵を見た瞬間、なんとも言えない表情をしたため絵描きさんが不安そうに声を漏らした。