冬の深さは
03
予算も待ち時間も今描いてる人の次いけそうだし、約20分って描いてる。
父さんへのプレゼントは用意してるけど、写真とは違ってこういった形で今後の俺たちを残すと思ったら素敵だ。

店の外で2人肩を並べてしゃべっていると、ものの数分でモデルだった女性が出てきた。
終わったようだ。
とても嬉しそうに笑顔で出てきた。俺には絵心が全くないからこうやって絵で人を感動させることができる人を本当に尊敬する。

と、少しぼんやりしていたら父さんに呼び戻されて我に返る。

「とも?ぼーっとしてどうした?」

「いらっしゃいませ。兄弟ですか?仲良さげですね」

「あ、すみません親子なんです。わたし父親なんです」

いつものことだがいつものように落ち込む父さん。
俺はケラケラ笑いながら鞄を置いて手袋を取る。

「し、失礼しました!とっても若々しくて素敵なお父さんですね」

「ありがとうございます」

「あ、気にしなくていいですよ。まず親子って気づく方がめずらしいので」

本当にすみません、と絵描きさんは何度も頭を下げた。
父さんは笑いながら冗談ですよ、気にしてないですよ、と言ったが、俺はわかってる。
めちゃめちゃ気にしてるってこと。

「くくく…」

「何笑ってんの」

「別に。あの、実は今日父の誕生日なんです。なんで、プレゼントということで家族絵を一枚、お願いします」

「誕生日なんですね!おめでとうございます!」

にっこり笑いながら絵描きさんは、まずは名刺をどうぞと丁寧に俺たち2人に名刺を渡してくれた。

「いつも頑張って働いてくれている父なんで、かっこ良く描いてくださいね」

プレッシャーだなーと笑いながらペンを取る絵描きさん。

俺の言葉を聞いて涙ぐむ父さん。
泣くの早いよ。

丸いすに座らされると、絵を描くからじっとしていないとダメだと思っていたんだけど、意外にも絵描きさんはずっと喋っていてくださいと言った。
談笑してもらえたら素敵な絵ができるので、と。

でもなかなか談笑って難しいな。
人のいる前で父さん可愛い父さん好き父さん抱きたいとか(これは談笑か?)言えないしな。

ちらっと隣を見ると、父さんは緊張しているのは目が少し充血していた。
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