冬の深さは
02

その後は食事をして、町中をぶらぶら歩いてショッピング。
そんなに疲れてないけどカフェに入って父さんはコーヒーを一杯、俺はミルクティーを一杯飲んで談笑する。

恋人らしいことはもちろんできないけれど、天気も良かったし何より父さんと一緒に歩いているこの空気がとても気持ちよかった。

時間も過ぎてそろそろ日が落ちるからイルミネーションを見に行こうということになった。
もちろん、コレは計画通り。

恋人同士の冬の定番といえば、イルミネーションでしょ。

昔女の子と付き合っていた頃は誘われても人混み嫌いだからといって全部断っていた。

今では人混み大好きだ。

だって父さんと違和感なくくっつけるから。

ニヤニヤしながら歩いていると、商店街の外れに簡易で出来た小屋があった。
中には男の人が1人入っていて、向かい合わせで女性が座っている。

よく見ると、即席似顔絵屋さんのようだった。

俺が足を止めじっとその中を見ていると、父さんも気付き外に出された『見本絵』をじっと見つめる。

「わぁ、凄いうまいなぁ」

笑いながら俺を置いて先に似顔絵屋の前に立つと、今まで描いたであろう一般人の似顔絵に釘付けになっているようだった。

とても個性的な絵は劇的にうまい、というより、ユーモアたっぷりで温かみのあるタッチだった。
すべての絵が楽しそうに笑っていて、ウエディングドレスとタキシードの二人もいた。

とてもとても、幸せそうだった。

3000円か、よし。

「父さん、並ぼう」

「え?描いてもらうの?」

「うん。記念に残るしさ、よくない?」

「そうだね」

今日、父さんに財布は持たせていない。
家に置いてきてもらった。

電車代も、食事代も、買い物代も、全部俺が払う。

そう言うと、父さんは申し訳なさそうな顔はしたけれど、ありがとうと言って断ることはしなかった。

俺の気持ちをわかってくれている。
そう思ってなんだかとても嬉しかった。
[146/212]
←BACKNEXT→
しおりを挟む
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -