冬の深さは
01
毎年この日はデパートで誕生日ケーキを買って帰る。
そしていつもより豪華な食事を作る。

一緒にお祝いして、ご飯を食べて、ケーキを頬張る。

そう、昨年までは。

ただの親子だった、昨年までは。



「父さん大丈夫?寒くない?」

「大丈夫だって。寒くても楽しいから気にならない」

はにかみながら笑い俺を見上げる。

ブチ犯してぇ

「なんか言ったか?」

「ううん。あ、次俺らの番だよ」

今日は父さんの誕生日。

幸い日曜日だから仕事も学校もない。

一日家でのんびりすることも考えたんだけど、やっぱり好きな人を喜ばせたい。

そのためにはもちろんお金がいるわけで。
俺はこの日のために恥を忍んで父さんにお願いした。

『父さんの誕生日に自分の金で父さんにプレゼント買ってあげたいからバイトさせてください』

マジックをする前に種明かしをするようなもんだ。

なんでも金がかかることはサプライズができない。

たったこんな、お金がかからないイルミネーションを見に行って高くもないプレゼントを渡すだけでも、だ。

早く社会人になって金稼ぎたいな。
せめて大学生になったらバイトはさせてくれるよな。

昼間は行きたかった映画館へ行って念願の公共の場で(暗闇だけど)手を繋ぐ行為ができた。
父さんはバレると言って最初は手をつないでくれなかったけど、俺がしぶとく手を握り続けたら観念してくれた。

流れるアクションを目で捉えながら、時間が経つにつれ握り返してくれる父さんの手を感じ凄くいい気分だった。

明かりがつくとすぐ手を離されたけど、ほんのり頬が赤くなってる父さんが見れたから良しとしよう。
今度は映画館でもっとエロいことを、と、考えていたらバレたのか腹にパンチを入れられた。
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