「絶対ナニもしないなら、いいよ」
「ナニって、何?」
「………」
「ねぇ、ナニって?」
「もう知らん。さっさと行くぞ」
「くくっ」
男同士が楽しそうに手を繋ぎ横断歩道を渡る。
すれ違う人は一瞬目を見開きじっと二人を見つめたが、誰も眉をひそめたり嫌悪な表情を見せる者はいなかった。
二人がとても幸せそうに見えたからかもしれない。
「おおー凄いなー」
「ライトアップいいね。昼間も見てみたいけど」
「うん。凄く綺麗」
流石観光名所だけあってか、周りはカップルや家族連れが多かった。
二人でぼーっと見上げ緩い時間が過ぎていく。
繋ぎ合った手のおかげか、寒いけど、暖かい。
「もうちょっと散策しよっか」
「そうだな」
デジカメに写真を収めつつゆっくり歩いて散策することになった。
するとぐぅ、と腹の虫が有志の腹の中で鳴り響いた。
「智、お腹空いた」
「俺も空いた。じゃあ行こうか」
二人は穏やかに笑いながら観光地を後にする。
そんな二人を、にやけながら見つめる3人の若者がいた。
「やば、あれってホモじゃね? 」
「ほんとだー」
「きも」
地元のやんちゃな男の子たちのようだ。
高校生ぐらいだろうか。
ガムを噛みながら二人を影で野次りケラケラと笑う。
「後、つける?」
「からかう?」
「色々教えてもらう?」
ケラケラと腹を抱えて笑っていると、ふとその内の一人が二人を見失った事に気づいた。
「あ、どっか行っちゃった」
「ほんとだ」
「つまんね」
沈みきった空は真っ暗で、少し淀んでいた。