BE THERE
09
「絶対ナニもしないなら、いいよ」

「ナニって、何?」

「………」

「ねぇ、ナニって?」

「もう知らん。さっさと行くぞ」

「くくっ」

男同士が楽しそうに手を繋ぎ横断歩道を渡る。
すれ違う人は一瞬目を見開きじっと二人を見つめたが、誰も眉をひそめたり嫌悪な表情を見せる者はいなかった。

二人がとても幸せそうに見えたからかもしれない。



「おおー凄いなー」

「ライトアップいいね。昼間も見てみたいけど」

「うん。凄く綺麗」

流石観光名所だけあってか、周りはカップルや家族連れが多かった。
二人でぼーっと見上げ緩い時間が過ぎていく。

繋ぎ合った手のおかげか、寒いけど、暖かい。

「もうちょっと散策しよっか」

「そうだな」

デジカメに写真を収めつつゆっくり歩いて散策することになった。
するとぐぅ、と腹の虫が有志の腹の中で鳴り響いた。

「智、お腹空いた」

「俺も空いた。じゃあ行こうか」

二人は穏やかに笑いながら観光地を後にする。
そんな二人を、にやけながら見つめる3人の若者がいた。

「やば、あれってホモじゃね? 」

「ほんとだー」

「きも」

地元のやんちゃな男の子たちのようだ。
高校生ぐらいだろうか。
ガムを噛みながら二人を影で野次りケラケラと笑う。

「後、つける?」

「からかう?」

「色々教えてもらう?」

ケラケラと腹を抱えて笑っていると、ふとその内の一人が二人を見失った事に気づいた。

「あ、どっか行っちゃった」

「ほんとだ」

「つまんね」

沈みきった空は真っ暗で、少し淀んでいた。
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