BE THERE
10

「はぁー食べた食べたー」

「おいしかったな」

「ん」

ホテルから徒歩10分ほどの所にあるスープカレー屋に行き、満腹になるまでその味を堪能した。
帰りの道をゆっくり歩きながら空を見上げる。

「なんか曇ってない?」

「明日晴れるかな」

「俺晴れ男だから大丈夫」

「そういえば智希はいつも遠足や試合の日は晴れてたな」

ふと、思い出す。

「小さい智可愛かったなー」

「可愛いなんて嬉しくない」

「そ?みんなに自慢したかった。今じゃこんな大きくなって…」

「まだ伸びるよ」

「伸びなくていいよ」

クスっと苦笑いして、繋がれた手を見つめ頬に持っていく。
智希の手の甲を自分の頬に押しつけながら、スリスリと甘えるように何度も温もりを確かめた。

「これ以上大きくならないくていいよ。これ以上目立たなくていい」

「自慢しなくていいの?」

「自慢はしたいけど……。智のかっこよさと可愛さは俺だけが知ってたい」

「だーかーら、可愛くないって!ってか可愛いって言うな!」

「智は十分可愛い」

照れる智希。
それを見て満足そうに微笑む有志。

一生懸命背伸びして、大人になろうとしてる所とかね。



「露天風呂の貸し切り、予約取れたよ」

「………」

「なんで睨むんだよ。入ってもいいって言ったじゃん」

「なんもしなかったらね」

「なんもってなに」

こんなやり取りをもう1時間はしている。

部屋に戻ると明日明後日の予定を確認し、浴衣に着替え有志はベッドの上をゴロゴロ、智希は椅子に座りフロントに電話をかけていた。
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