「はぁ…はぁ…」
「っ、ててっ」
「はぁ………どうした?」
智希は白濁の液が零れてこないよう丁寧に有志のソレを拭いていると、眉間にシワを寄せてうずくまった。
少々苦しそうだ。
「ちょっと下半身が、ね……」
ヘヘ、っと照れた笑いで誤魔化そうとする智希。
有志はそれを見てはぁ、と大きくため息をついた。
「ほら、出して」
「え」
「早く。…行かなきゃいけない所あるし…う、後ろは無理だけど、く、口でシてあげる」
「いいの?」
「そのかわり、絶対下の名前で呼ぶな」
「えー呼びたい」
「俺がまた勃つからダメ!」
「くくっ」
「わ、笑うな!」
「準備出来た?」
「ん」
数分もすればお互い元通りのカタチに戻り、何事もなかったように準備を進めた。
この後は観光地を回って、晩ご飯を食べる。
とりあえず旅行鞄を床にそのまま置いて、ショルダーバックに携帯と財布を詰め立ち上がる。
15分ほどのタイムロスを埋めるように、有志は智希を急かした。
「お前が来て早々サカるから」
「何言ってんの。しっかり有志も楽しんだじゃん」
慣れない。
下の名前で呼ばれることに。
「顔、真っ赤」
「うるさい」
ニヤニヤしているのが見なくてもわかる。
頬に人差し指が這い軽く振りほどくと、クスっと小さく笑い声が聞こえた。
悔しい。
俺、父親なのに。
こんな事で悔しがっている時点で父親らしくないのだが。
部屋の鍵を閉めてエレベーターへ行くと、ふと小さなポスターに目がいった。
ホテル内で行っているサービスのようだ。
「露天風呂貸し切り…」
「へぇ」
ボタンを押しエレベータを待っている間、誰も来ないホールで仲良く首を傾げていた。
後ろ姿は本当にそっくりだ。