「おめでとうございます!!特賞大当たり!!」
「………」
カラン、カラン、と大きなベルの音が馴染みの商店街に響き渡る。
買い物をする全ての人が足を止め音の鳴る方へ目をやると、呆然と立ちつくす長身の若者の姿があった。
そのベルのうるささに若干眉をひそめているが、端正な顔立ちは午後の商店街で買い物を急ぐ主婦達の目の保養になる。
「おめでとう智希君特賞だよ!凄いの当てたね!」
「はぁ」
まるで自分の事のように喜ぶ男は智希と顔なじみで、智希が小さい頃から父子家庭でがんばっているのを知っている。
白髪混じりでニコリと笑えば七福神にいそうな良い表情の持ち主だ。
周りから見ればどちらが特賞を当てたのかわからないだろう。智希があまり興奮していない所為なのかもしれないが。
卵や大根の入った重たいビニール袋を持ち直すと、ガラガラの隣に置かれた特大ポスターに目を向けた。
特賞北海道3泊4日の旅。
「やったね!もうすぐ春休みだし、行っておいで!」
「あ、はい…」
「智希君イケメンだからね!彼女もいっぱいいるんだろ!」
いっぱいはいたらダメだろ。
「彼女と行っておいで!お父さんには俺からうまく言ってあげるからさ!」
「行くなら父と行こうかな。いつも頑張って働いてくれてるんで。少しでもお返しに」
「かぁ〜!!なんて良い子なんだ!!おまけだ!後で俺の店寄んな!野菜分けてやるよ!」
「どうも」
良い子、ねぇ。
「あっ、あっあぁっ」
「父さん気持ちいい?」
「んっうんっうんっ」
「もう、イくよ」
「あぁっ!」
良い子、ねぇ。