>>筒抜けは当たり前
美術室から帰ってくると、パソコンとプロジェクターの準備が整っていた。

「途中帰ってくるかと思ったけど、美術室にずっといたの?」

帰ってきた私たちにリナリーちゃんが聞いた。私がうなずいて答える。

「うん、ティエドール先生にお手伝い頼まれたから」

「へえ、どんなさ?」

なぜかラビくんが神田くんの様子を見てから、意味深な笑みを浮かべて詳細を聞く。

「先生が作った彫刻、スペースとっちゃうから処分したかったんだって。それで、絵が出来上がるまで、二人で彫刻を処分してたの」

私は神田くんをちらりと見上げて、ぼかしていったほうがいいだろうからと、そうした。

私たちはその日、順調に大道具作りを進めた。
今週はあと二、三日大道具の時間を取るらしい。とりあえず明日からは役者は練習に戻り、他は大道具作りだ。

この日の帰り、神田くんと連絡先を交換した。
校門を出るまで、少し話をする。

「神田くんは、映画の好みってある?」

「いや……俳優が上手いやつは大体見てる」

「そうなのかあ」

「お前は」

「私は……小説が原作のとか、見てるかも」

「わかった」

「お互い見たい映画探しとこう。あっ、ねえDVDを見るでもいいよ?」

「はっ?」

「……あ! いや、いまあってる映画で見たいのがなかったら」

「あ、ああ……」

DVDといったら、家で見る以外ほとんど選択肢がなくなるだろう。まだ家にお邪魔するまで私たちは仲がいいわけではないのにその提案はまずかった。私は後悔した。

「と、とにかく、連絡するね、お互い空いてる日とか調整しないといけないし……」

「わかった」

「それじゃあ」

気まずくなりかけたところでちょうど校門に来たので、私はそう切り上げた。

なんだか、恋人目前の男女のような雰囲気だった気がして、ドキドキした。



*



「さて、もうミランダ先生には話は通してあるわ。それに怜唯が来る前にお手伝い終わらせたから」

「えっ、早くない?」

「まあ、リナリーがマッハで終わらせたからな」

翌日のお昼休み。リナリーちゃん、ラビ君、ミランダ先生が私が図書室に来る五分間の間にすべてを終わらせ、待ち構えていた。いったいどうしたのか検討もつかないまま、私はリナリーちゃんに背を押されラビ君が引いた椅子に座らせられる。

「そろそろ、新展開みたいね」

とミランダ先生が向かいに座りながら言う。

「えっ、何がですか」

私はみんな何かを知っている風ににやにやしているのを見渡す。全員が席について、始まった。

「昨日、携帯の連絡先交換してたさね? あと、デートの予定話し合ってたし」

「で、デートじゃないからね? でも何で知ってるの」

「情報通の俺なめんなよ」

ラビ君は得意気だった。私は別に大丈夫だけど、ラビ君の場合、神田くんをからかっていそうなので、少しだけ神田くんが気の毒に思われる。

「それでどうするの? どこにいくとか決まった?」

「映画を見に行こうかって、言ってるよ」

今度のお出掛けプランを私は簡単に伝えた。
今度の休みに二人で一緒に映画に行き、お昼を一緒に食べるというプランである。その後はどうするかまだ決めてない。見たい映画も、まだ決めていない。

「ちゃんと決めとかないと、ユウだったらそのまんま解散とかありうるさ。それだけは避けないと」

「そうね、もうちょっと一緒にいるべきだわ」

「せっかくのお休みだし、親睦を深めた方がいいんじゃないかしら」

と三人が口々に同じ意見を言う。私も、お昼を食べてなにもせず帰るというのはさすがに短いかなと思っていた。成り行きに任せられないか、とぼんやり期待していたことは否定しない。

「あ、それじゃあ、カラオケに行くのはどうかしら?」

「それだめです! 私、歌うの下手だから」

「ユウに限ってないとは思うけど、二人っきりでカラオケにはいるって、ちょっと危ないさ」

「怜唯、撃退できなさそうだものね」

私のカラオケだめ主張を完全無視して、リナリーちゃんたちは男女二人っきりでカラオケにはいる危険性を話し合っている。
神田くんに限ってはないだろうと二人は考えているようだけど、万が一のことを話し合っていた。
リナリーちゃんは、撃退方法を伝授すれば大丈夫だとか、ラビ君は、カラオケで離れて座れば大丈夫だとか言ってる。でもどっちも的はずれだ。だって私は歌が下手でカラオケにはいきたくないのだから。

「ね、ねえ、私が見た限り、神田くんっておしゃべりじゃない気がするのだけど」

ここでミランダ先生からポツリと一言。この一言で、一気に流れが変わった。

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