きっと最後は手を伸ばす | ナノ
きっと最後は手を伸ばす
レウは、クロの自室のベッドで、自分の隣にべったり居座る子供を引き剥がすのを諦め始めていた。クロが言っていた任務とはしばらく子供の面倒を見ることだが、こんなにくっつく必要は無いはずだった。レウはこの状況が不満だった。
子供はイノセンスの適合者だったらしい。気がつかなかったクロもレウも、ベレーから少し小言を言われた。子供は、エクソシストとなるようだった。
子供のイノセンスは触れたものにイノセンスの影響を与え、さらに瞬間移動も可能にするらしい。AKUMAに触れれば毒のように徐々にAKUMAを破壊。または触れたものを武器にしてAKUMAを攻撃して破壊。そういうことができるようだ。武器を瞬間移動させたり、自分を瞬間移動させたり、仲間を瞬間移動させることもできるらしい。

聞いてもいないのに、これらのことを子供がペラペラと喋った。レウは聞こえてくるので仕方なく聞いているが、正直言って離れたくて仕方が無い。しかし、子供のイノセンスのせいで離れるのも容易でないので諦めたのだった。


「ねえ、お姉さん」


子供が、レウに呼びかける。レウはちらと子供を一瞥するが、すぐに視線をそらして無視した。


「僕ね、ずっとお姉さんに会いたかったんだ」


「……」


レウは、すっと立ち上がった。任務を放り出し部屋を出て行こうと思った。


「待って!」


レウは子供に腕をつかまれる。彼女は、一瞬だけ動きを止め、それから腕を振り払う。
子供は、待ってと繰り返した。何度も彼女の腕をつかみ、振り払われても諦めずに食いついてくる。レウは子供の執念に対抗するように何度も何度も振り払い続けた。子供の言葉の先を聞きたくなかった。
そしてようやく彼女は、クロの部屋のドアの前にたどり着いた。ちょうどそのとき腕をつかんでいた子供の手を振り払い、ドアを開け、クロの部屋から出た。


「僕を一人にしないで!」


ドアが閉まる瞬間、涙をためた子供の目だけが夜のライオンの目のように光って見えた。


もう目を背けられない


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