きっと最後は手を伸ばす | ナノ
きっと最後は手を伸ばす
なにを考えているのかわからないクロの目はレウの瞳を射抜かんばかりだった。レウはその黒い瞳に見える自分が、惨めに映っている気がした。
クロからレウが離れようとすると、ものすごく強い力で阻まれる。一体なぜこんなこと、と驚きと不快感を瞳に映すレウにクロは気づいているはずだ。しかしクロはなにを考えてかレウを離そうとしない。
レウはじわじわと嫌悪がつのってそれが彼女に行動を起こさせようとするのを押しとどめる。しかし自分が嫌悪していることは伝達しなければならないと何かが思わせ、掴まれた腕に力を込めた。


「……」


クロは、レウが、微々たるものではあったが、変化を加えても僅かばかりも変化することはなかった。


「今日は、ここにいろ」


再度同じことを、クロは言った。
レウは、抵抗することは無駄なのだとこのとき気づいた。これ以上しても、ただただ人間であるクロと接触が増えるだけだ。
レウは腕の力を抜いた。そうするとクロも彼女を伺いながらゆっくりと腕を離した。
レウは、どこへも行かないと表現するために、彼女が目を覚ましたベッドにやや不満気に座った。
クロは、それでいいと言わんばかりに鼻をならした。レウには、そのクロの行為が腹立たしかった。

人間はいつだって勝手だ。レウの両親や仲間だって、人間がいきなりやってきていきなり殺した。彼女らはなにをしたというのだ。
人間はこの地球上の生物の頂点にいるとでも考えているのだろうか。

彼女は腹立ち紛れにクロにベッドの上にあった柔らかいものを投げつけた。予想だにしていなかったのか、それはクロの頭に命中した。


「てめぇっ……」


怒りを露わにするクロをレウは鼻で笑った。これで少しすっきりした気がする。
今度はクロがレウが先ほど投げてきたものを投げつけてきた。レウは難なくかわした。もう一度彼女は鼻をならす。
そこまですると彼女の腹立ちは消え、彼女は満足した。
するとふあ、とあくびがこみ上げた。彼女はその体の現象に従ってベッドに横になった。今日はここにいなければならないのなら、結局は暇なのだしすることは一つ。睡眠だ。
レウはすぐさま瞼を下ろし、ゆっくりとした呼吸を始めた。

途中、クロが仕返しをしようとしたのか、レウを覆いかぶさるように覗き込み、彼女に影を落とした。しかし彼女は眠りに落ちる前に足でクロを蹴り飛ばして眠り始めた。

木の枝の感触を、彼女は恋しく思った。


美男美獣の一進一退


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