きっと最後は手を伸ばす | ナノ
きっと最後は手を伸ばす
まぶたの奥から強い光がさして、レウは目を開けた。
体を起こすと、彼女は一度も使ったことの無いベッドというものの上にいた。
ここはどこだろう、と視線を彷徨わせる。
ベッドから立ち上がって、室内を歩く。
一旦、外へと出たい。彼女はドアの方へと行き、ドアノブを回す。引けば、ドアは開くはずだ。何度か、ベレーのいる部屋に入る時雌がそうしていたのだから。しかしドアは開かなかった。がちゃがちゃと音を立てるが開く気配がない。ドアを観察して、なにがいけなかったのか探し出そうとしたがなにもわからなかった。
しばらく彼女はドアが開くよう奮闘した。しかし全て、失敗に終わってしまったので、彼女は一休みすることにした。

がちゃ、と音がしたのはその矢先のこと。いとも簡単に彼女の目の前でドアは開いた。ぽかんと口を開けて惚ける彼女をよそに、クロが部屋に入って来た。クロは彼女を一瞥すると、無言で目の前に生肉の乗った皿を置いた。

彼女は生肉から顔をそらす。食べれるわけがないじゃないかこんな状態では、という愚痴が胸中に広がった。クロは、わかってない。

とここで、はっとして彼女は改めてクロをみた。

クロはどこからどうみても人間だった。腕も目も、足も、獣の部分など一切ない。じゃあ、あれは……

色々な可能性を検討した結果、レウは自分で、見間違いをしたという見解に至った。クロに吸い取られた希望が戻ってくるとともに、彼女は落胆した。結局、何ものとも分かり合えはしないのだ。


「どこへいく」


レウはもう一度森の方へ戻ろうと立ち上がって何も言わず(言えないが)部屋を出ようとした。そうしたら、クロから引きとめられた。


「今日はここにいろ」


レウは従わずドアノブに手をかけた。ドアは先ほどとは違って、いとも簡単に開く。なんだ、開けれるじゃないかとレウが拍子抜けしていたときだった。


「っっ!」


クロがレウの腕を引っ張って自分と向き合うようにした後、ごつんと額を合わせて来たのだった。


染み入るいたみ


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -