きっと最後は手を伸ばす | ナノ
きっと最後は手を伸ばす
レウは自分が人間に対して怒りを沈めつつあることに焦りを感じ始めていた。きっかけは、あの子供だ。人間にもレウと同じ境遇に陥ってしまった子供がいたことでライオンの自分にあるはずのなかった"同情"という感情が芽生えてしまったのだ。

そもそもなぜ自分はライオンの姿から人間の姿に変わってしまったのか。原因はイノセンスという自分の生まれ持ったものが原因であると分かってはいる。人間であふれかえったこの教団ですごすことになったあの日、突然体が激痛と共に変形したのだ。それはおそらくイノセンスがレウが此処で生きるために施した処置だったと言えよう。イノセンスの処置は、適切だった。形が強制的に変わってしまったことで、今まさにレウの思考や感情はその形に追いつこうかしているのだから。
しかしそれはレウが人間に対して憎悪や憤怒を抱えていなければの話であった。



*



「よろしくお願いします。レウ」


今回の任務はシロとの任務であった。レウは自分に干渉してきそうなシロとの任務に苛立ちを感じる。ジロリと睨むようにベレーを見ると、ベレーはニコニコと笑っていた。その笑顔の意味がわからない。レウはふいとそっぽを向くことにした。


「なんだか、嫌われたみたい……ですね」


「レウ君はそもそも人間が嫌いみたいだから気にする必要はないよ」


「人間が嫌いなのに、人のためにAKUMAを倒してるんですか?」


「人のため、というより……彼女はAKUMAを倒すことが何より嬉しいらしい。ソカロ元帥のようにね」


「はあ……」


早く出発しないだろうかと待っているとようやく話が終わった。


「じゃあ、いってらっしゃい」


「いってきます」


彼女は出発と帰還のとき、いつも人間たちが交わす言葉になんの意味があるのだろうと不思議に思っていた。そんな言葉を交わすよりも早く任務に行かせて欲しかったのだった。


「あ、そういえばその団服、伸縮性を上げたから、脱がなくてもイノセンスを発動できるよ」


出発直前、ベレーに言われた。ガミガミ衣服についてうるさい人間たちは、レウが服を脱ぐという行為をよほどよく思っていないようだ。
レウは人間の習慣に合わせることに疲れを感じながら、出発することになった。


フラストレーション


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