(サンディの独白)


 私の名はサンディ。
 この世界が始まったばかりの頃、大地に大きな一輪の花が咲きました。世界の始めに生まれた人たちは、その花を「ノフィスカリア」と名づけて育て、それから花の魂を三つに分け、姿を変えてやりました。
 花は三頭の象となり、その中の黒い一頭が私だったのです。
 そして私はある日、タムという青年の従者になることを命じられました。
 彼は不思議な人でした。
 見た目が変わっていたわけではありません。いたって平凡で、容姿に華やかさを備えているわけではなく、人目をひくような人ではなかったのです。
 性格も控え目で、何かしらの偉業を成し遂げる人物とは思えませんでした。
 しかしタムは、この世界のあらゆる法則の束縛を受けていなかったのです。しかも、あらゆる言葉を初めから理解していました。
 私には、彼がこの世界の住人だとは、どうしても考えられませんでした。
 タムが何者なのか。どこから来てどこへ行くのか。その使命とは何なのか。
 これまで、様々な人物が考えをめぐらせてきましたが、答えは得られませんでした。
 当人すら、わからないでいるのです。
 私は長い間、タムと共に旅をしてきました。幾多の試練をくぐり、困難を乗り越えてきました。気の遠くなるほどの時間を、タムの隣で過ごしてきました。
 世界は今、終わろうとしています。私の命も間もなく尽きるでしょう。
 私とタムの旅も、もうじき終わります。別れが近づいているのです。
 昔、――数えるのも骨が折れるほどの遠い昔、ある予言者が、こう言いました。
「あなたが死んで、タムと一度別れても、必ず再び会うでしょう。いいえ、何度でも、会うでしょう」
 それがどういう意味なのか、私にはわかりません。
 この世が終わり、私もいなくなるというのに、どこで再会できるのでしょうか。
 しかし、彼女の予言が外れることはありません。私は生まれ変わって、別の世でタムと顔をあわせることになるのでしょうか。
 いつまでも離れないでいるのだとしたら、私はその運命を少しだけ滑稽だと思い、また、少しだけ嬉しく思います。
 さようなら、タム。またどこかで会いましょう。
 私は始祖の花ノフィスカリアより生まれたサンディ。
 言葉に愛された旅人タムの、従者です。



[*前] | [次#]
しおりを挟む
- 2/18 -

戻る

[TOP]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -