02


「何でもないの。ちょっとね。友美、後でノート見せてくれない?」
「いいわよ。どうせ授業聞いてなかったんでしょ。その代わり……」
 ランチでもおごって、とおどけて言うのかと思ったが、友美はいつになく真剣な表情を見せた。
「相談に乗ってほしいの」

 * * * *

 学校からの帰り、亜沙子と友美はカフェに立ち寄った。亜沙子はよくそこを利用している。一つ一つの席が高い壁で仕切られていて、非常に落ち着くのだ。レポートの作成や友達との雑談など、とにかくお世話になっている。周りの目を気にする必要もないので、話を聞くのはうってつけの場所だろう。
「何頼む?」
「私はコーヒー」
「じゃ、私オレンジジュースね」
 注文をしてしばらくすると、コーヒーとジュースが運ばれてきた。亜沙子が紙の袋からストローを取り出す。グラスにストローを入れ、かきまわした。氷がカラカラと音を立てる。グラスを見ているふりをして、視線を友美に移した。友美は小さなため息をつきながら、コーヒーに砂糖を入れている。
 友美はしっかりした子だった。誰かに何かを頼ることが少ない。そんな彼女を亜沙子は頼りにしていた。自分のように失敗を重ねることはないし、成績も良い。思ったこともきちんと言える。だから、いつも悩み相談をするのは亜沙子の方だった。亜沙子が悩みを打ち明け、友美が助言する。今回は立場が逆だ。はたして自分が相談に乗ることなど出来るのだろうか。緊張した亜沙子は、一気にジュースを飲んだ。
「亜沙子」友美が言った。
「探偵と知り合いだって言ってたわね」
「うん。そうだけど」
 黒峠の話は友美に話していた。信じてもらえるはずがないので、周りの人が変になったことについては言っていない。友美は黙りこんだ。
「ねえ、どうしたのよ」
「実は、弟がいなくなったの」
「友弥君が?」
 頷いて、友美が続ける。
「あまり素行の良い子でもないし、またプチ家出かな、とも思うんだけどさ。近頃噂になってるでしょう、あの話。だから心配で」



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