21


「残念だね、明日からは三連休だよ」
 そうだ。土日と祝日が続いている。とんだ連休になりそうだった。
 そのまま車で家に送ってもらうことになった。やっと家に着く。疲れたし、少し休もう。家の前には誰かが立っていた。あれは友美だ。
「友美、どうしたのよ」
 黒峠には待つように言い、亜沙子は車を降りた。
「どうしたのじゃないわよ。学校サボって、あんたこそどうしたの? メールを送っても返事がないし、電話も繋がらないし、家にもいないし。心配したのよ」
 今まで携帯の着信履歴を見る暇がなかった。何しろそれどころではなかったのだ。
「ごめん、ちょっと警察署に行ってて」
「警察? あんた、何したのよ」
「何もしてないわよ」
 自分は信用されていないのだろうか。何をされたのよ、なら分かるが、何をしたのよ、だなんて。ため息をつきつつ、良い機会なので黒峠を紹介しておくことにした。助手席の窓から黒峠が顔をのぞかせる。友美が目を見開いた。
「友美、この人が黒峠さん。ああ、一回会ったことがあるんだったわね」
 友美は頷いた。「どうもお久しぶりです。以前は弟がお世話になって……」
 黒峠は首を傾げた。
「覚えていませんか。猫のマリーを捜してもらったんです。あの時は弟が失礼なことを言ってすいませんでした」
 いきなり黒峠は頭を抱えて唸りだした。驚いた友美が後退りをする。
「この人、こういう人なの」亜沙子は冷やかに言った。
「思い出した! 猫のマリー。私が見つける前に自分で帰ってきた子ですね」
「ええ、そうです。またご迷惑をかけてしまうようでごめんなさい」
「いいんですよ。私は困っている女性の味方です」
 二人は楽しそうに談笑を始めた。黒峠先生、友美にはやけに態度が良いのね。私にはあんなに失礼なことばかり言うくせに。腰に手を当てて二人の話を聞いていたが、あまりに長引くので黙っていられなくなった。
「さっさと帰ってもらえますか先生。うちの前にずっと車が停まっていたら通行の邪魔です」



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