公爵曰く:
で、わたしたちはあのイカダを使って、アキバマーケットとやらに行くことになりまして。まあそれはいいんだけども――、問題はなんでこんな速度で河を渡っていくのかって話だ。[1/3] ブリザーモン 吹けよ雪、呼べよ氷河! もうずっと、絶叫系アトラクションみたいな勢いでイカダは進んでいっている。もっとマシな移動手段はなかったのかな……! イカダでどんどん進んでいくと、河はそのうち海になった。でも、あちこちに氷があって空気もひんやりしていて―― 「さ、さむい……」 「……着ろよ」 泉ちゃんが身震いしたかと思うと、輝二くんが自分のジャージの上着を差し出す。わあ輝二くんイケメン! あ、輝二くんの腕鳥肌立ってる。 泉ちゃんは遠慮がちにそれを受け取った。それにしても、泉ちゃんいいなあ。 「……いいなあ」 「は?」 何気なくつぶやいたつもりだったのに、バッチリそれは輝二くんに聞かれていたみたいで、輝二くんは振り返ってわたしを見た。 「あ、いや、輝二くんのジャージがうらやましい……って何言ってるんだわたし! ごめ、気にしないで!」 「想……一緒に使いましょ?」 輝二くんのジャージ使える泉ちゃんが、うらやましい、って思った。んだけども。わざわざ言うことじゃないよねこれ!! なんかもう、ダメだ。輝二くんは優しいだけなのに。ってかなんでこんなうらやましがってるんだわたしは……。 泉ちゃんは羽織ったジャージを広げて、わたしを手招きする。わたしは嬉しくなって、にやにやしながら泉ちゃんの横にひっついた。 あ、ちなみに泉ちゃんLOVEな純平さんはすごく泣きそうになってた。う、うん、ガンバれ! そんなことで、わあわあ騒いでいるうちに、いつのまにか陸地が見えてきた。 ドサって音と共に、雪の上に着陸した。イカダはソリのようにつるつる進んでいく。 「ねえ、この先って――」 言われた先を見るヒマもなしに、道はイッキに下り坂になった。輝二くんが「しっかり捕まれ!」と言ったから、わたしは一生けんめいイカダの木にしがみつく。 「うわあああぁっ」 「な、何アレ!」 「雪だるま――!?」 何故か下り坂の先には巨大な雪だるまがあった。方向転換、なんてこともできずにイカダは雪だるまと正面衝突して、地面に投げ出されて――気づいたら、雪が周りになくなっていた。えっ。 「あれはストーブ!?」 雪がなくなったことの原因は、どうやら街の中心部に巨大なダルマストーブがあったから、みたいだった。えええ……。 NOVEL TOP ×
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