風はわたしに囁いて
[6/6] 渦は完全に消えた。 ゴマ島に上陸したら、みんなゴマモンたちは仲間に会えた歓びに浸っているようだった。 「あの渦は、ケルビモンの魔力の影響で風のビーストスピリットが海底に封じられたときに発生したんじゃ」 「でも、どうやってビーストスピリットをコントロールしたんだ?」 確かに。でも元々獣! って感じのデジモンじゃなかったから、カンタンに制御できたのかな? 友樹くんは、やっぱり気合い!? と尋ねる。 「それもあるかなあ。でも、それは女の子の、ヒ・ミ・ツ?」 えっ。泉ちゃんどうしちゃったの! わたしみたいに具合悪くなっちゃったのかな。言ったら怒られそうだけど……。 ゴマモンたちが数匹近づいてくる。よかったね、ゴマモン。 「ありがとうゴマ、あなたたちのおかげで助かったゴマ!」 「例なら泉に言えよ!」 「俺たちは、何もやってない……うわあっ」 今日の泉ちゃん、本当にかっこ良かったよ――って何抱きついてるの泉ちゃん!! 輝二くんも拓也くんも顔真っ赤だし、さあ。 「や、やめろよ……」 あ、ちょっとこの輝二くんかわいいかもしれない! でもうらやましいっ。純平さんも友樹くんも同じ気持ちだったみたいで、泉ちゃんにぎゅう、ってしてもらってる。だから皆ずるいよう、わたしだって! 「泉ちゃん! 抱いて!」 「想、その言い方はマズい!」 「え、何が?」 マズい、ってどういうことだろう。輝二くんはどこか焦り顔でそんなこと言ったけど、よく分かんなかった。 泉ちゃんはわたしの前に来ると、わたしを見つめながら言った。 「想。助けてくれようとして、ありがとう」 「で、でもそのせいでわたしたち海にどぼんしちゃったよ?」 「けどそのおかげであたしのビーストスピリット見つかったでしょ?」 確かに、そうだけど。 それにありがとう、って言うなら、わたしの方こそ言わなきゃいけないんだ。 「泉ちゃん! ありがとうなんてわたしも、だよ! 泉ちゃんはわたしを海の底で見つけて、救ってくれたもん」 「そんな……、大したことなんかしてないわよ」 自分も危険な目に合うのを承知で、泉ちゃんはわたしを助けてくれた。シューツモンになって、わたしや皆を守ってくれた。 わたしは、泉ちゃんが大好きだ、って思った。い、いやもちろん友達としてだけども……。 「い、泉ちゃん……!」 「わ、想っ!」 わたしは、泉ちゃんに飛びついた。 泉ちゃんはびっくりしていたけど、わたしの背中をよしよし、と撫でてくれた。泉ちゃんの身体があったかくて、わたしは泣きそうなくらい安心した。 「ようし、アキバマーケットに行くぞ!」 拓也くんが先導する。わたしは、泉ちゃんと手をつないで歩いていた。 自分の危険を省みずわたしを助けてくれた、泉ちゃん。もう一度友達を、自分を、信じていいんだ、と思った。 望ちゃん。わたし、貴方に会ったら謝らなくちゃいけない。 けれど、こんな風に変わったわたしを見てほしい。――なんて、自己中心的なことをふと考えてしまった。 110921 泉ちゃんとの友情を書いてみたかった…… のだけども、なんか感情描写とかヘタクソすぎてアレですね。。。 ※泉ちゃんが夢主抱きかかえたまま進化!とか体勢的にキツそうですがつっこんではいけません。 NOVEL TOP |