公爵曰く:
わたしたちはアキバマーケットのデジモンさんたちに聞き込みをすることになり、熱の下がらないわたしは、泉ちゃんに手を引かれて歩いていた。[2/3] 武器屋、露店、色々なお店をまわった。けれども、トーカンモンやデジヴァイスに関する情報は全く得ることが出来なかった。 「なかなか、知ってる人いないね……」 「困ったわね……あっ、純平!」 「泉ちゃん、想ちゃん!」 純平さんと合流し、聞き込みからの収穫はあったのかと話し合う。純平さんは、トーカンモンたちがご飯を食べていた店に聞きこみをしてくる、と言った。 「なんかそこで大食いの大会もやってて、勝ったら素敵な景品が貰えるんだって」 「それって、デジヴァイスじゃない!?」 純平さんの説明に、泉ちゃんは食いつく。え、そんな都合よくあるものなのかなあ。 泉ちゃんは大食い、と聞いた途端に目がキラキラ輝き出した。えっ。 「純平、行くわよ! 想はここで待ってなさい。すぐ戻るからね!」 「い、泉ちゃあん!」 「え……わたし置いてくの」 あっという間に泉ちゃんは駆けていき、純平さんも必死にそのあとを追い、姿を消してしまう。ひどい。 * 外はムダにいい天気で、空は水色、雲の白がくっきりとしていた。太陽の光が頬に当たる。ビタミンDが生成されるね! そんな空を見上げ、ぼーっとしていると、遠くの方から何かがやって来るのが見えた。 「何、あれ……」 金色に輝く、翼の大きな鳥。ただ一度空を渡っただけなのに目に焼き付く圧倒的な存在感。不思議な神々しさがあった。 「ヤタガラモンだ」 「へっ」 背後から声がして、振り返るとそこには、さっき武器屋で聞き込みをした赤い兜の騎士デジモンさんがいた。 「世の闘士、ヤタガラモン。……そして君たちはオファニモンにより選ばれし闘士だろう」 どういうこと。あのデジモンが、世の闘士だというの――? 石碑に封印されていたのスピリットは、あのデジモンのことだったのか。 そして、闘士、って。今までいきなりそんな風に見破られたことがなかったから驚いた。とっさのことすぎてわたしはすぐに返答できずに、数秒経ってからようやく小さい声で、「そ、そうです」と言えた。でも、どうして分かったんだろう……。 「人間の子供が戦う術もなしにこの世界に存在するのは難しい――だが、スピリットを得ているならば話は別だ」 「で、ですよね……ごほっ」 わたしの疑問にもさらりと答えるデジモンさん。鋭いなあ。 「君は、どの闘士の力を受け継いだのだい」 「えっ、あ、色のヒューマンです。で、色のビーストは悪の闘士なんです」 わたしは二人の色の闘士についての説明をした。シキモンは、色のヒューマンの闘士で、わたしが一応進化したらなれる。ハクジャモンは、色のビーストの闘士で、敵。ややこしいね、うん。 「……ふむ。では君の流儀に沿うと、君は善の色の闘士ということになるのか」 「流儀、って……、まあ、そんな感じです」 なんか理屈っぽいデジモンさんだなあ。 「よし、君に協力しよう。我が名はデュークモン」 「へっ」 今、なんて言ったの。ぽかんとしてデュークモン、さんを眺めていると、彼はまた「君に協力する、と言ったのだよ」と言う。え、なにこの急展開。 信じても平気なんだろうか、と思った。助けたフリをして、後々裏切られるかもしれない。 わたしがそう返答を出せぬまま不安気に彼を見ていると、彼はまた話す。 「このデュークモンが仮に君が云うところの悪であるのなら、今ここで具合の悪そうな君を倒している」 「……そ、そうです、よね。あ、ご協力、ありがとうございます。比沢想、です……」 なんて頭の回転が速いデジモンさんなんだろう。……わたしも安堵して、彼に名前を告げる。 デュークモンさんは「では参ろう」と言って方向転換をし、行こうとした。赤いマントが風を孕んで揺れる。わたしも立ち上がる。その瞬間、めまいがしてよろける。 「うわあ……」 「……どうやら君の病を治すのが先のようだな」 「うぐっ、すみません……」 うう、鼻水ずびずびしてきた。 NOVEL TOP |