ほむらのけもの
泣いた夜の次の朝に輝二さんがいなくなって、寂しかった。でも、そんなこと言えるハズがない。おこがましーことこの上ないもん。[1/4] 俺を倒せ! 伝説の闘士ヴリトラモン暴走 「ケガとか、大丈夫……?」 目の前をゆく輝二さんに、声を掛ける。 いつの間にかいなくなってて、そしたらものすっごいヒーローみたいなタイミングで助けにきてくれて、ギガスモンと戦って、ビーストスピリットで暴走しちゃって、――海に落ちかけて。あの短時間のあいだに、色々ありすぎた。だから、心配だった。 「なんとか、な」 「そっかあ……」 「……」 ――沈黙。やっぱり、会話しづらいよ、この人。 でも、なんとなくわたしは輝二さんの横を歩いたまんまだった。――あれ。歩くの、合わせてくれてる? もともとわたしと輝二さんの歩く速さなんて全然違う。少し前の輝二さんだったら、絶対独りで先を歩いていたに違いない。すこし、わたしに慣れてくれたのかな。いや、わたしじゃなくて、皆に慣れてくれたんだ。皆と一緒に、行動してくれてる。 「腕、切れてるな」 「え? あぁ、ほんとだ」 自分では気付かなかった。指さされた腕には、小さな切り傷があった。いつケガしたのか覚えてないけども、まだ真っ赤だから新しく出来た傷だ。皆がギガスモンと戦ってたときかもしれない。 「お前も、いろいろ平気だったか?」 平気か、とは、やっぱりわたしが泣いていた晩のことだろう。 「う、うん。大丈夫、だよ。ありがとう……」 わたしがそれを言うと、輝二さんはふっ、と笑った。ああ、この人が笑ったところ、初めて見る、なあ。わたしはそれっきり、何も言わなかった。なに話せばいいか、分かんなかったから。 NOVEL TOP ×
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