ぜったいいえない。
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「輝二!」

 わたしたちはあれからすぐに、ヴォルフモンのあとを追った。
 そこにいた彼はヴォルフモンではなく、輝二さんの姿だった。てことは、進化が解けるほどに強くやられてしまったんだ。あっ、ボコモンとネーモンも一緒にいる。
 でもそれより、何かが地面の中から出現するのが見えた――輝二さんのデジヴァイスも光っている。あれは、スピリット!?

「ビーストスピリットー!!」

 輝二さんは叫ぶ。スピリットは輝二さんのデジヴァイスのなかに格納された。そして、

「スピリット・エボリューション!」

「ガルムモン!」

 彼は狼のような、犬のような機械デジモンになった。ガルムモンは、まるでホンモノの狼がするように、遠吠えをした。

「輝二が、進化した!」
「ヤツがビーストスピリットを……!?」

 でもガルムモンは、木に体当たりをしたりして、様子が明らかにおかしかった。

「まだ、スピリットを制御できないんじゃ!」

 そ、そんなっ!
 でも。人が獣になる、ってことはやっぱり難しいコト、なんだよね――。今の輝二さんは野生の魂が強いんだ……。
 それを見ていたギガスモンはにやり、と汚く笑って、ガルムモン目がけて走る。狙いはもちろん、ビーストスピリットだった。
 ガルムモンもギガスモンに向かい、突進していく。

「まずいっ逃げるんじゃ!」
「えー?」

 ボコモン、ネーモンがわたしたちのところへ戻ってくる。ああ、でもガルムモンはどうなるんだ――!
 辺りが真っ白になって、強烈な爆発音がして、三つあった石像もろとも崖は崩れ、ギガスモンはそれらと共に海に落ちて行く。

「俺が、ビーストスピリットを手に入れたのか……」

 ガルムモンは輝二さんに戻り、そしてそれだけ呟くと、そのまま倒れて、海に落下しそうになる。
 その落ちそうになった輝二さんの腕を掴んだのは、岩っぽいデジモンだった。ゴツモン、って名前らしい。

「お前が背負い込んだ、オレのスピリット! 渡してやったんだ、しっかりやれよ」

 ゴツモンはそう言った。よく分からないけど、二人の間には何か絆があるんだな――。
 とにかく、無事に戻ってきた輝二さんを見て、わたしはほっと息をついたのだった。寂しかった、とか思ったなんだなんて、絶対言えない。

110725
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