ほむらのけもの
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 とりあえずグロットモンから逃れることはできた、けど。
 今はみんなで輪になって座って、話し合いをしてる、でも空気は当然重かった。

「ごめんなさい、ボクのせいで」
「えっ。それを言ったら、そもそもわたしが戦えていたらもっとマシな結果だったかもだし……」

 結局、わたし一人だけ役立たずなんだ。友樹君のせいなんてことはない。

「違うわよ、二人とも悪くない……」

 泉ちゃんは一応、そうは言ってくれているけれども、わたしはわたしが弱いからいけなかった――と思っていた。

「今度アイツに会ったら、オレが泉ちゃんのスピリットを取り返してやる!」
「そんな約束しちゃっていーのー?」
「メタメタにやられたのもー忘れたのかー!」

 純平さんが言うと、ボコモンネーモンは非難の声をあげた。すると、純平さんは「約束してんじゃなくって、励ましてんだよ!」と言った。

「なーんだ、口だけかよ。ともかく、オレたちは森のターミナルに行かなきゃいけないんだ」

 そうだった。森のターミナル。そこには何が待ち受けているんだろう。というか、今更だけど、わたしもそんなとこまで付いてきていいのかな。何もできない、のに。
 帰りたい、なんてこと、以前よりかは思わなくなった。だけども、わたしが皆に付いていく意味なんてものもない。

「森のターミナル、って! それじゃあ、泉ちゃんのスピリットはどうなるんだよ!」

 泉ちゃんは静かにデジヴァイスを見つめていた。……泉ちゃん。

「泉ちゃん、逃げてばっかりじゃダメだ、力を合わせればきっと――」
「勝ち目のない勝負を挑むより他にやれることがあるだろう」

 輝二さんの物の言い方は冷たい。だけども、いつも輝二さんが口にするのは事実しかない。
 純平さんは、輝二さんの物言いにカチンときて、抗議を始めた。輝二さんはむっとした。

「そりゃーいいよな、輝二は! 自分がスピリットを取られたわけじゃないもんな」
「何!?」

 純平さんが輝二さんに挑発すると、二人は取っ組み合いを始めそうになる。そんな、やめてよ。輝二さんは誤解されやすいだけで、マトモなはずなのに……!
 拓也君友樹君が間に入って収めようとし、わたしがオロオロしていたとき、泉ちゃんが立ち上がった。

「行きましょう、森のターミナルへ」

 まさか、泉ちゃんが率先してそんなことを言うとは思わなかった。かっこいい、な、すごいな。

「拓也はんたちの意見も至極もっともじゃ。しかし純平はんの意見も仲間思いじゃ――」

 ボコモンはそうしてみんなに「ワシにまかせとくれ! 恨みっこなしの方法で決めるんじゃ」と言った。

「シャーマモンに占ってもらうんじゃ!」

 というわけで、占いの館――っていうか、テントがいっぱい立ち並ぶ場所に、わたしたちは来ていた。
 歩いている途中、純平さんの逃げてばっかりじゃダメ、がよみがえった。純平さん、風の工場のときはあんなに嫌がってたのに。やっぱり、進化したから考えも変わったんだ。――もう、逃げたがりはわたしだけだ。
 占い屋は、たくさんあった。でもはっきり言うとうさんくさい占い屋が多かった。日本も昔はシカの骨を焼いて占ってたりとかしてたみたいだけど、どうして占いってそんなヘンな方法でやるんだろ。

「ここにいる、シャーマモンこそ本物じゃい!」

 そうして、ボコモンを先頭に、わたしたちはシャーマモンのいる神殿へ足を踏み入れた。
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