何故ならそこに答えがあるから。
お城のほうは、薄暗くてとても不気味だった。それを見上げていると、急に城が光を放つ。そして、辺り一体――というか、デジタルワールド全体のコードを、じわじわと奪っていく。コードが城に吸い込まれていった。[1/4] 決戦! 命ある限り デジタルワールドを取り戻せ 「今度は、なんだ!?」 「少なくとも、俺たちを狙っているわけではないようだ……」 「移動しましょう……どうするかは、それからよ」 岩や枯れ木が浮いて、どんどん空高くに上がっていく。ボコモンが言うには、重力や空間のデータが歪められているから、らしい。 ケルビモンは、きっとあの城にいる。ここは闇の大陸だから余計に、だけれど――きっと、他のデジタルワールドの地域も、以前よりずっと荒れ果てているに違いない。わたしはそのことを思って、胸が痛くなった。 進化を解いていないままだった皆は、次々と進化を解いていく。 「決戦だな」 「これが……最後の戦いになるのね」 「ああ、任せとけよ!」 「うん、お願いね、二人とも!」 「ぶい!」 友樹くんは、拓也くんと輝二くんに向かって、Vサインを示した。あ、かわいい! 「良いのか、純平」 「良いも悪いもないだろ、ケルビモンと互角に戦えるのは、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンだけなんだから」 「純平……」 「ただし……負けたら、承知しないからな!」 そう言って、純平さんは笑いながら輝二くんをどついた。うん、仲間の背中を押せる純平さんも、素敵な人だ。 「想、すっごいにやけてるね」 「き、気のせいだよ!?」 ネーモンにつっこまれる。二人が微笑ましい、と思ったんだけど、わたしは自然とにやけていたみたいだった。は、恥ずかしい! 「なあ、ケルビモン倒したら、皆でパーッとやろうぜ!」 純平さんは輝二くんと拓也くんの間に入り、肩を組んだ。考えるだけで、楽しそうだった。 「さんせいです、ぼく、二人のためにおりょうり作るはら」 料理、と聞いてわたしの頭に思い浮かぶのは、いつかのバーガモンの村での出来事だった。絶対パーティーとかしても、この二人には台所に立たせないようにしよう。 「だったら、あたしは……、ご褒美に、一日デートしてあげる!」 「えー!?」 「えっ……」 泉ちゃんがとんでもないことを、言った。そうして、また純平さんとわたしの声が重なる。泉ちゃんなんてことを言うの……! 泉ちゃんとでーとするのも楽しそうだけど、それ以上にこ、輝二くんとで、でーとなんて、羨ましいにもほどがある。別にわたし輝二くんとでーとしたいわけじゃないけど、正直言うといいなあ……! とか思ったり、するよ。 「想さん顔真っ赤! ボクはね、ほっぺにちゅーしてあげる! ちゅー!」 「ちゅー!?」 友樹くんはそうやって、唇を尖らせて見せた。二人は困惑しているようだったけれど、ちゅ、ちゅーなんてわたしだってしたことないのに友樹くんったら……! きっと友樹くんの言うとおり、わたしの顔は真っ赤なんだろう。ゆでタコみたいに。 「わしらはお揃いの腹巻を手編みで編んでやるまきー」 「それはいらない」 二人とも息がぴったりだ。でも、きっぱりと言われてボコモンはショックを受けたようだった。なぐさめるように拓也くんが、ボコモン、と言う。 そして、そこに輝一くんが近づいた。 「……しっかりな」 「ああ」 輝一くんと輝二くんには、それだけでもう通じ合うことが出来るんだろう。 わたしはその二人を見て、なんだかとても安心していたけれど、ふいに、誰かに背中をつつかれた。振り返ると、泉ちゃんがいた。 「想。……あんたも、何か言いなさいよ」 「えっ。……わ、わたしは――、」 何か、言おうと思った。けれど、輝二くんと拓也くんを見ているだけで胸がいっぱいになって、言葉につまる。 輝二くんは、最初はこわかったけれど、本当は優しくて、守ってくれて。拓也くんは、いつだって手を差し伸べてくれた。 輝二くんといると何だかドキドキするし、拓也くんといると家族みたいな安心感がある。――その二人に、わたしが言えることは。 「……えっと、二人にはいつもお世話になってるから、勝ったら、わたしを一日中こき使っていいよ!」 「は!?」 「想お前何言ってんだ……」 「もっと可愛いこと言いなさいよ……」 皆は呆れ顔というか、ドン引きしていた。えっ、もしかして、言い方がまずかったかな!? NOVEL TOP ×
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