何故ならそこに答えがあるから。
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「……さてと! そろそろ行くか」
「ああ」

 そう言って、わたしたちはデジヴァイスを掲げる。――色は世に、そして世はすべてのスピリットに。

「ケルビモンを倒して、この世界を取り戻す!」
「あいつさえ倒せば……この世界に平和が戻る!」

 そうして、二人はハイパースピリットエボリューションでカイゼルグレイモンと、マグナガルルモンとなる。二体は空を飛び、ケルビモンのいる城へ向かった。
 ついに、ケルビモンが浄化され、この欠けた世界に大地が戻ってくるんだ。今までケルビモンの魔力の為に亡くなっていったデジモンの想いを、スピリットを託したわたしたちの想いを背負って、彼らは行ったんだ。
 皆も、走りながら二体に応援の言葉を掛けていた。


「……気を付けてね!」


 二体の背中にそう叫んだ。やがて、彼らの姿は見えなくなった。


 空遠くのほうに、ケルビモンと戦うカイゼルグレイモンとマグナガルルモンがいた。
 わたしたちは、それを見ている。わたしたちは、ここで祈っていることしかできない。スピリットが彼らに力を与えたとはいえ、わたしたち個人はあまりにも非力だった。
 いよいよ、あの戦いですべてが終わるんだ。わたしは、色々なことを思い出す。――今まで、本当に色々なことがあった。自分で言うのもおかしいかもしれないけれど、わたしは成長できたと思う。
 最初は、自分のことが嫌いでどうしてこの世界にやって来てしまったのか、とか考えていた。それから皆と出逢って、シキモンになって、デジモンたちを助けて、望ちゃんと分かり合えて。
 オファニモン様のメールには「これは貴方の運命を決めるゲームです」と記してあった。わたしは、最初そのメールを捨ててしまった。だから本来ならば、わたしはここにいないはずだ。今わたしがここにいることが奇跡なのか運命なのかは分かないけれど、この世界が愛おしかった。


「……想、ちゃん」


 輝一くんが、少し離れたところからわたしに手招きをした。わたしはもちろん空で闘っている様子が気になっていたけれど、輝一くんの方に行った。それから、輝一くんの隣でカイゼルグレイモン、マグナガルルモンが戦っている様子を見ていた。


「これで……、すべてが終わるんだな」
「うん、長かった」
「……あの、さ。前に君は俺を夢のなかで見たことがある、って言っていただろ」

 唐突に言われて、わたしはぎくりとした。

「あ、うん。……わたしはメールじゃなくて、気付いたらデジタルワールドにいたんだけどね、時々、輝一くんの夢を見たの」

 わたしは、何度か赤い瞳の輝一くんを見た。はじめは輝二くんなのかと思っていたけれど、彼は輝一くんだった。

「俺も、想ちゃんにはずっと見覚えがあった。……いきなり、こんなこと言うの変だけど」
「本当? あのね、夢のなかの輝一くんは……赤い瞳でわたしを見ていた。ダスクモンみたいな、血を透かした赤だった」
「……そうか。不思議だね。俺も、ダスクモンだったときに、君の夢を見たのかもしれないな」


 そう言って、輝一くんは俯いた。
 どうして、わたしが、彼が互いの夢を見たのか。それには、一つの思い当たる出来事がある。わたしはあの日、渋谷駅で落下した。後ろには、輝一くんがいた。
 確証はもてなかったけれど、だからわたしは輝一くんの夢を見たんじゃないか。


「……でも想ちゃんは、生きてるんだね」


 輝一くんはわたしの瞳をじっと見て、そう言った。え――。


「お城が!」

 と、その時、誰かが叫んだ。
 空には唐突にピンクの可愛らしいお城浮かんでいて、わたしたちの意識はそちらに持って行かれる。そしてケルビモンはそれを破壊した。爆発によって、お城は閃光した。カイゼルグレイモン、マグナガルルモンはそのお城に巻き込まれてしまったようだった。そんな……!
 ケルビモンの稲妻が、二体に向かって放たれる。けれど、彼らは負けずに立ち上がり、ケルビモンに向かっていった。
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